今から6年位前のこと。自分の将来に向けてのビジョンを深刻に考えつつ、あちこちにぶつかりながら公私ともに試行錯誤していて、いっぱい失敗も続けていた頃。
せっかく社長とかにしていただきながら、どうも居心地が悪いまま7年くらい経っちゃってて、コンサルタントさん(エグゼクティブ・コーチ)をつけて相談したりもしているのに、なぜかスッキリとせず。
経営者の仲間と飲む席では、「トップなんて結局、孤独なもんだよね」という愚痴っぽいトーンで締め括るのがお決まりのこと。こんな風に理解しあえる友人がいるのは嬉しいなと一瞬だけ癒やされるものの、日々の生活に戻ればまた孤独が押し寄せてくる。何だかなあ、経営者なんて割が合わないなあとサラリーマン社長はブツブツ言い続けていました。
という時に、とある仕事で出張のためにロサンゼルスへ行きました。人に関して打ちのめされるくらいに大きな悩み事を抱えていた時で、滞在中に食事に行った数名のメディア社長仲間にこぼしたりで、浮かない状態で帰路に着きました。
で、帰りのLAX空港で本屋に立ち寄ったところ、ピタっと、こちらの本が目に止まったのです。
空港の本屋さんが大好きで、いつも1冊、2冊、その時にディスプレイされている旬の本を買って帰るのが常でした。
その日に手にしたのは、リーダーシップの大家であるジョン・マックスウエル氏の「リーダーシップ・ゴールド」。よっぽど経営者としての悩みが潜在意識に刻まれていたのでしょうか(苦笑)。
本を開けて目次を見て、まず第一章のタイトルにやられ、そのままレジに持って行ってました。そこには、こう書かれていたのです。
I. If it’s lonely at the top, you are not doing something right.
(もしトップは孤独だと感じるなら、あなたは正しいことをしていない。)
あら。そうなの? とすでに目からウロコ(笑)。その後に書かれていたことを読みながらウロコがボロボロと剥がれ落ち、すでに第一章だけで元が取れたと帰りの機内で感激したのを覚えています。
印象に残っているのは、「あなたは皆に後押しされて今のポジションについた。あなたの役割は、今度は皆があなたのいる場所にたどり着けるように後押しをしてあげることだ」という言葉。あと、「リーダーシップはポジションとは関係ない。孤独もポジションとは関係のないこと。それはあなたのパーソナリティがなせる技」という項目もあったと記憶しています。
立場とか権威とか、別にこだわっているわけでもないのに、なぜか「管理者」としての自分が勝ってしまって、社員を仲間として見ることができにくくなっている時期だったようです。人をリードする、導く、育てる、皆で体験する、皆で成長する、そのために道筋を提示していく、というリーダーの役割をすっかり忘れていました。
孤独はポジションのせいじゃないんだ、と分かったら、何だか気楽になりました。自分の考え方次第だし、人との関わり方次第なんだ。自分でコントロールできることなんだと理解し、接し方を変えていったら、関係性がグルングルンと一瞬にして変わっていきました。
僕はあなた方の成長を助けたいんだよ、という心からのメッセージがずいぶん浸透してからは、どんなに厳しいことを言っても皆との関係が崩れる気はしなくなりました。あなたのために良いと思うから言ってるんだからね、という思いが伝わると信じられたから。
新しい会社へ移っても、その体験をそのまま持って行けたのが役に立ちました。あまり昼夜、一緒に食事したりする方ではないものの、孤独のコの字も感じずに楽しく経営をさせていただけたのは、かつてのことを思うと隔世の感です。
今でも時折、「経営者なんて孤独なもんだよね」という言葉は聞きますが、いや、そんな風に思う必要はないみたいよ、とこの本のことを教えてあげたくなります。
毎月のお給料を遅れずに払い続けることが、実はどんなにたいへんなことかなんて、別に知らなくてもいいじゃないですか。可愛い社員にそんな苦労、させなくてもいい。いつもありがとう、と感謝だけしていれば、孤独感などどっかに消えてしまうものなんですね。
今は束の間、個人軸で仕事をしていますが、その内、ちゃんと仲間と大きな事業をやるようになっていきたいと思います。