「No」と言う勇気は必須。明確な優先順位と瞬間的な選択眼が試される

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大好きなマーケッターであり、作家であるセス・ゴーディン氏の毎日のブログは、とても短いけれど、簡潔で奥が深い。こんな風なブログにしたいなと、ダラダラ長い自分の文字列を眺めてため息をついてしまう。

今朝の彼のメッセージは、「No is essential」。

成果を出したいことに成果を出すためには、それ以外の多くのおいしい話を断らなくてはならないと彼は言う。

その仕事はできません。その価格ではできません。パーティにはうかがえません。今はお手伝いできません。申し訳ないけど、できません…。

そうやって、断ることで、Noを言い続けることで、僕らは最も大切なYESを積み重ねていけるのだ、と。

もう10年近く前、社長をしていた会社の経営が軌道に乗り始めた頃、持てるリソースを使えばあれもこれもできる、お客さんもいる、待っててくれている、だからやろう、と思って手当たり次第に手を付けていたことがある。

抜群に良いアイディアに思えたのだけれど、目の前の競争を見るのを忘れ、サービスの向上を忘れ、社員との絆を強くすることを忘れ、仕組みづくりを忘れ、ビジネスは驚くほど急激に下降線を辿ってしまった。収入は増えたのに利益は下がった。社長として一番恥ずかしいことのひとつだと思う。

悩んでいた時に、経営の先輩であるオーナーからいただいたアドバイスが、「選択と集中」という言葉だった。遅ればせながら、アメリカに来て初めてビジネスを学んだ自分は、40半ばでようやくそんな言葉があるのを知る。

どんなに優れた人材でも、ひとつのことに集中できなかったら力は分散して弱まってしまう。組織全体がそんな状態では、皆が忙しくしていたとしても生み出せる価値は小さい。人、お金、資源、すべてにおいて、同じことが言える。

集中する、ということは、対象となる数を減らすことであり、それはイコール何かを捨てるということだし、今はやらないで諦めるということだ。何を捨て、何にフォーカスするのか。その選択こそがビジネスの戦略だと痛みを持って学ばせていただいた。

やればいいことはたくさんある。行けばいい場所もたくさんある。だけど今それをするべきかどうかは、別問題だ。
その後、勝間和代さんが「断る力」という本を出された。 インパクトある本で、いつものごとく賛否の否も盛り上がるのだけれど、断れないでいた僕には最高のテキストとなった。そうか、Noは言ってもいいのか、と。そんなことで失う人間関係なら、最初から本物じゃなかったんだろうと開き直れるようになった。
同じ年にはやましたひでこさんの「断捨離」も発売され、自分はどんどん断れる人、捨てられる人に生まれ変わっていった。今でも流されそうになることはたくさんあるから、常に自分に言い聞かせていたい。「No is essential」と。

※冒頭の写真の「トライブ」は、最高にいかしたリーダーシップの教科書だと思う。訳者への個人的思いから日本のアマゾンのレビューは汚れてしまっているけれど、アメリカ版のレビューを見れば、本の価値は一目瞭然。この本が日本で読まれない原因になってしまっているとしたら本当にもったいないことだ。すべての人におすすめしたい一冊です。