「思考は現実化する」「引き寄せの法則」のウソ、ホント

なりたい自分になって夢を実現するために、自分自身を習慣的に改良する「セルフ・アップグレード」についての連載、第四回です。

全米でビデオ販売から始まって、出版につなげ、超大ヒットを記録した「ザ・シークレット」。日本でも引き寄せブームを起こしましたね。

ここで伝えられているメッセージは、ナポレオン・ヒルで有名になった「思考は現実化する」と同じことなわけですが、ビデオの作りとか、表現方法がとても一般的で分かりやすかったために、ヒットにつながったのだと思います。

その後、リーマンショックがあって、世界にまで飛び火するほど経済に大打撃を被るわけですが、「ザ・シークレット」はその時、非難を浴びる存在になったりもしました。

ナポレオン・ヒルは誰も非難しないのに、ザ・シークレットに対しては、人を無闇に煽って不幸に陥れたという人までいたり、不思議な現象でした。

「思っただけで何でも願いが叶うなら苦労しねえよ。」

非難する人は、そんな風に言うものです。

ある意味、僕も賛成です。思っただけで夢が叶うんだったら、誰もが皆、億万長者だし、望み通りの暮らしを手に入れているはずです。

現実にはそうなっていない人が大多数。思うだけでは、ダメだってことです。

この本を紹介して読んでくれた人が、僕に言いました。

「あんな本に乗せられて調子に乗った奴らは、今頃、後悔してるだろうねえ。」

いやいや、それは違うんじゃないでしょうか、と僕は咄嗟に思いましたが、黙っておきました。ザ・シークレットは、どうしても俗的な側面があって、表面的に理解しているだけだと、そう思っても仕方がない部分もあるのかな、と、別な読み方もあることを教えていただいたことに感謝しました。

僕は実は、日本語版が出る前に英語版のDVDを観て、オーディオブック版を何度も繰り返し聞いて、それが意識の奥底にまで刻み込んで大きく変わるきっかけをいただいたので、全面的に否定されると、それはそれで違和感たっぷりなんですね。

結局のところ、先人がいろいろな言葉で表現していることを凝縮した真理のひとつだと納得しているからです。

何となくモヤモヤっとしたままだった、その時のことが、後にクリアになりました。

僕は稲盛和夫さんの経営塾「盛和塾」に、準備期間を入れると5年ほど在籍させていただいていたのですが、ある時、稲盛氏が講話(DVD)の中で、こんなエピソードをお話になるのをうかがいました。

稲盛氏がまだ経営に困って、わらをもすがる思いで松下幸之助さんの講演に行った時のこと。「ダム式経営」をせよとおっしゃる松下さんに対し、そんなことができたら苦労しない、どうやってやったらいいのか教えてほしいと誰かが質問したところ、松下氏は、こうお答えになったのです。

「そんな方法は私も知りませんのや。知りませんけど、それは思わんとあきませんなぁ。」

そんな禅問答のような答えでしたが、その時、稲盛氏の中に電撃が駆け抜けました。「思う」と言うことの本質を瞬間的に理解されたからです。

口では思っている、と言っても、心の奥底で「そんなの無理だ、現実には難しいだろう」と考えているようでは、自ら可能性を否定しているようなもの。

思うというのは、表面的だけではダメなんだ。潜在意識に到達するまで思いを深くし、無意識の内に、それが行動にもつながっているほどでなくては、到底実現なんて不可能なんだと悟るのです。

思いは確かに現実になる。だけど、何を思うかだけではなく、「どう思うか」が一番、大切。

思いの深さに伴って、意識も行動も変わっていく。だから、実現に近づいていけるんだ、ということに気がつかれた稲盛氏は、「まず思え」という言葉で、社員や塾生に教えを説いてきました。「潜在意識に到達するくらいに強く思え」と。

思う、ということは、それ自体が深いこと。「現実にはなかなか難しいんだよね」と思いながら紙に書いてみたところで、実現するわけがありません。潜在意識に何があるかが問題なのです。

では、どうしても心の中で否定してしまう自分を克服できない場合はどうしたらいいのか。

また次回以降に向けて考えてみたいと思います。

⇒ 第一回 2015年を「セルフ・アップグレード」元年に
⇒ 第二回 伸び悩んでいる人に共通する5つの問題
⇒ 第三回 変化に適応できた者だけが生き残る「適者生存」。自分を改良し続けて進化する必要があるのです