ノーベル文学賞を受賞しながら、一度もメディアに顔を出すでもなく、受賞の連絡に応えるでもないボブ・ディラン氏のことは、アメリカのワイドショーなどでも話題にされたりしています。
先日も彼と同世代のベテランミュージシャンが、とあるインタビューの中で、「彼はもともと賞なんて関心がなかったし、授賞式にも出てこないんだよ」と話していました。
でも、ようやく賞の関係者に連絡があったようで、メディアが「賞を受ける意向のようだ」と報道をしていました。
参考 「Bob Dylan says he’ll be at Nobel Prize ceremony, newspaper reports」
こういうのを、スタイルとして意図してやると、かえってカッコ悪くなってしまいがちですが、彼の場合は、不器用というか、自分軸が徹底していて、それゆえに世間的な感覚とずれてのことなのだと、彼をまるで「かばう」ような表現があちこちで聞かれました。
自分らしく生きること、しか、できないという感じで、それがカッコ良さになるのでしょう。
信奉者は今も多いんだなあとアメリカ人の反応を見ながら感じました。
彼の代表作としては、「ライク・ア・ローリング・ストーン」や「風に吹かれて」が有名ですね。
ちょうど私が生まれた頃に世の中に出た歌です。
時代背景を反映してなのか、思想的なことが見え隠れする、現代詩とも言えるようなフォークの世界。
でも、その世界が、50数年を経て、今、新たに「文学」のひとつの形として認められたわけですね。
Amazonのプライムミュージックなどでは、彼のベスト盤などが無料で聴き放題になっているので、ジョギングしながら聴いたりしています。
気にしていたからなのか、なんなのか。そんな折、アメリカのサイトで、続けてこの歌の歌詞を引用句として見る機会がありました。
「The Times They Are A-Changin’」(「時代は変わる」)
その歌詞は、歌で聴いてすぐに意味を把握するのは難しいのですが、文字にして読むと、本当に深いし、これ、50年前のこと?というか、「今の時代」にまったくふさわしいメッセージではないか、と思うのです。
Come gather around people
Wherever you roam
And admit that the waters
Around you have grown
And accept it that soon
You’ll be drenched to the bone
And if your time to you is worth saving
Then you better start swimming or you’ll sink like a stone
For the times they are a-changing
素晴らしい日本語訳をつけているサイトがありました。
一番だけの抜粋ですが、ぜひ全編、ご覧いただくといいかなと思います。
ここかしこに散らばっている人よ、集まって!
周りの水かさが増しているのをごらん
まもなく骨までずぶ濡れになってしまうのがおわかりだろう
あんたの時間が貴重だと思ったら泳ぎはじめた方がいい
さもなくば石のように沈んでしまう
とにかく時代は変わりつつあるんだから(「Tap the Pop」さんより一部抜粋させていただきました)
50代はゆでガエル、なんて言われ方もしているわけですが、今の日本の情勢などを見ていても、「古いもの」と「新しいもの」が混在していて、変えようとするものと、変えまいとするものとが、押し相撲を繰り広げる姿が、あちこちで見え隠れします。
でも、好むと好まざるとにかかわらず、「時代は変わる」。
だから、変化に抵抗しようなどとしても、無駄なことなのです。
泳ぐのか、泳がずに沈んでいくのか。そのどちらかしか選択はない。
40代、50代の人が、「私って、アナログ人間だから」と、ITツールを学んでいないこと、使いこなせていないことを笑って正当化したりしているのを見ると、わかってるのかな?という気になってしまいます。
平成だってもう終わるかもしれない今になっても、まだ昭和の教育や価値観を引きずって、変化の必要性も感じていない人々が政治や経済の重鎮に居座っていたりもします。
2番の歌詞では、「For the loser now will be later to win, For the times they are a-changin’ (今の敗者は、後の勝者だ、時代は変わっているのだから)」とあります。
4番では、「Your old road is rapidly agin’ Please get out of the new one if you can’t lend your hand, For the times they are a-changin’ (古い道路は急速に古びていく。手を貸さないというのなら、新しい道からどいてくれ。時代は変わっているのだから)」。
最後の5番では、2番と真逆で、「The order is rapidly fadin’, And the first one now will later be last, For the times they are a-changin’ (秩序はあっと言う間に褪せていく。今の一番手が、後には最後尾になるだろう。時代は変わっているのだから)」と歌っています。
この10年、15年。
テクノロジーの進化のあまりの速さに、まさか、と思ったことが現実になるのを私たちは目撃してきました。
巨大な世界的フィルムの会社が、デジタルカメラの進出で倒産したり。
携帯電話の世界的王者が、スマホの進出で倒産したり。
Facebookの出現で、Mixiがその役目を終えたり。
この数年のスパンでも、一世を風靡した(と過去形で言うのもおかしなほどに、「今」にくくられるはずの)Twitterが、ここへきて10%近い人員削減を余儀なくされていたり、とにかく変化の速度が早くなっています。
人の価値観も、急速に変わっています。
人々が大きな声を集めるシステムを持ち始め、影に隠れた声が表に結集し、大きな力も無視できない時代になりました。
変化は、ますます加速していくのでしょう。
そんな中で、私たちにできるのは、ただひたすら、泳ぐこと。泳ぎ続けること。
溺れたくなかったら、泳ぐだけ。
変化の水が増してくるのに耳を澄ませて、流れに乗って、泳いでいくことですね。