大人世代のクライアントが、人生を再起動しようとして、新しい方向性を模索するのは良いのですが、気になることがいつもあります。
それは、「アンテナがすっかり錆び付いている」ということ。
年齢のことを言っているのではなく、これは20代であっても、共通することでもあるし、現役の社会人であっても、プロとして活躍している人でも、同じようにあることです。
何はなくても、上質な情報がなければ始まりません。
そして、その情報を手に入れる方法をまったく知らなければ、空も見えないジャングルを、GPSもなしに歩くのと一緒。
迷子になって当たり前なのです。
アンテナを立てて、世の中を俯瞰して眺める
ハワイやロサンゼルスで、ウエブと雑誌を作る会社の社長をしていたわけですが、普通、そういうメディアで働く編集者だったらば、「新しいことには目がない」とか、「情報通でなんでも知っている」という印象がありますよね。
目の前の半径1メートルのことじゃなくて、世の中を「俯瞰してみているかどうか」が、一番試されるところだろうと思います。
でも、海外に出てきて、初めてメディアで働いたようなスタッフは、そもそもの資質が違うし、基礎的なトレーニングを受けていないので、ゼロからスタートしないとなりません。
ネットメディアでいくらでも情報などリアルタイムで取れる時代。でも、せっかくそういうツールがあるのに、使い方を知らなければ、うまく利用できないのです。
だから、海外に出てしまうと、「日本のことは何もわからない」人になってしまいます。
かつては、電車のつり革につかまってボーッと上を見れば、週刊誌の見出しが目に入って、なんとなく世の中が見えたもの。
皆が新聞を読んだ時代には、そこにも同じように雑誌の広告がいっぱい載っていて、時代の空気感を味わうこともできました。
でも、電車に乗らなくなったら、そして、新聞を読まなくなったら、もう情報からシャットアウトされてしまう。
日本人相手に情報を紡いで、送り出そうとする人たちが、それでは、困るのです。
あちゃーっと嘆いていてもしょうがなく、経営者で編集長でもあった私は、どうしたか…。
トレンド情報勉強会で、アンテナを磨く
編集者とか言っているのに、「ヤバイ、まったく情報をキャッチするためのアンテナがない」ということに危機感を覚えた私は、彼らに課題を与えました。
週に一度、「トレンド勉強会」を開催して、テーマを決めて、ひとりひとつ、情報を持ってくるように、と。
なんでもいいのではなくて、「人の移り変わりが見えるもの」「世の中の変化が感じられるもの」「人が問題意識を持って議論していること」「生活を変えるかもしれない新しい技術」「人々が話題にしている知っておくべき流行トピックス」と、テーマは決めていました。
単なる話題の事件やニュースではなく、そこに時代性が加味されて、これからの時代の行方を予知するかのような内容であることが条件。
それこそが、編集部に所属するスタッフが目を光らせているべきことだし、努力しなくたって、自然と「アンテナ」に引っかかっていくはずのことだからです。
最初は、「このサイトから情報を見てきて」と、情報ソースの選択肢すら提示しました。
そして、持ってくるネタを見ながら、これは別にたいしたことがない、これは大事、という選択眼を磨くための背景を、ひとつひとつ解説していきます。
もちろん、持ってくる情報の中には、私も知らないことがいっぱいです。皆、自分のアンテナで集め、自分でスクリーニングをして持ってくるわけなので、当然、オリジナリティもあります。
誰もがすべてを知るのは不可能なので、だから、とても勉強になった時間でした。
繰り返しやっていると、そのうち、要領がわかってきて、彼らも自分で情報ソースから見つけられるようになります。
ああ、アンテナが育ってきたな、磨かれてきてるな、というのを確信してから、さらに次の段階に移ります。
スコトーマ、引き寄せの法則、カラーバス効果…。言葉はいろいろあれど
もっと慣れてきたら、今度は、必要な情報が、見つけようとはしなくても、自然と向こうから飛び込んでくるようになります。
「今まで、なんで見えてなかったんだろう?」と不思議になるほど、面白いように見えてきます。
カラーバス効果、という言い方もありますし、引き寄せの法則、という表現もありますし、また脳科学の方では、「スコトーマ(盲点)」なんていい方もあります。
見よう、と意識した瞬間、盲点が取り外されて、まるで自分で引き寄せているかのように、見たいものが見えてくるんですね。
人の意識は、見たいものしか見てないのです。
そこにちゃんとあるのに、意識を移すまでは、「盲点」になって隠れています。
だから、意識的になって、スポットライトを当てて上げる必要がある。でも、それには、何の苦労もないのです。ただ、見えてきちゃうのですから。
ほんのちょっとの意識の改革で、見える人は見えてきます。そして、大きな成果をダシテイクのです。
独立起業をしたい、という人に課題を与えて、関連テーマのことを調べてきてもらいます。
最初は情報がなかなか見つからない。でも、不思議な事に、だんだんと見えてくるものです。
「調べようとすれば、こんなにも情報があったんですね! 今まで私、何を見てたんだろうって、驚きました…」
そうセッションで結果報告をしてくれるクライアントさんが続出です。
ウエブにも、YouTubeにも、書籍でも、講座でも、学ぼうとすれば、いくらでも学べるほどに、素材が溢れている。
慣れれば慣れるほど、キーワードの入れ方にも創意工夫が出てきて、さらに多くのリサーチ結果がつかめます。
英語や日本語以外の言語が使える人なら、その情報量たるや、10倍以上です。
圧倒されないで、優秀な情報処理能力を次に磨く
まずはアンテナを立てる。
そして、それをどんどん使って、性能を磨いていく。精度は、使えば使うほどに磨かれていき、アップグレードしていきます。
そうすれば、世の中でわからないことなんて、なくなっていきます。
そのことに、クライアントは少なからずショックを受けます。
そして、見えてきた情報の量と質に圧倒されます。
情報はまさに武器、そのものです。
集め方が足りないと、間違った方向へ行きかねませんが、同時に、集めた情報の処理の仕方も知らなかったら、ただ圧倒されて終わります。
種種雑多な情報があふれているネットの世界。使えるか、使えないかで、可能性が大いに変わってきてしまう時代です。
これからの時代に欠かせない、と言われて久しい情報処理能力。
まずはアンテナを立てることから始めましょう。