もともと22話分が予定されていた「グリー」のシーズン5が、2話少なく、20話分で終了となるとウェブのニュースで報じられた。日本ではシーズン4までDVDになっているようだけれど、好きな人はとても好きな番組だと思う。
このミュージカルドラマが一貫して訴えているのは、違いを認め、誇りを持ち、自分らしく輝こうということ。人を受け入れ、自分を受け入れ、世の中の価値観に惑わされず、自分らしい生き方をしていけば良いのだという強烈なメッセージで貫かれている。
そもそもプロデューサーのライアン・マーフィ氏がゲイなわけだけれど、同性愛、ドラッグ(女装)、アジア人、ダウン症、車いすなどなど、登場人物は「差別の対象」となるキャラクターが満載だ。シーズン1では彼らはいじめられっ子ばかりだったが、歌を通じて徐々に自信を持ち、強くなっていく姿が大いなる共感を呼んだ。
最初の頃に額の上に指でL字を作っているのは、「Loser(敗者、負け犬)」の意味。何でも勝ち負けを決めたがるアメリカっぽいサインだが、お前はルーザーだみたいな表現は、子どもだけではなく大人の言い合いでも使われるし、言われるととても痛い言葉のようだ。この辺はカルチャーがくっついてのものだから、僕などはあまり感情を伴って受け取れることはないけれど。
アメリカでは熱狂的な支持者が多数いる。子供も大人も含めて好きな人は好き。でも嫌いな人は脅迫状を送っちゃうほど嫌い。見たくないものを見せられてしまうからね。
残念なことに今シーズンはスタートでつまづいた。主役の人気俳優がドラッグの過剰摂取で亡くなり、脚本を書き換える必要が出たこともあって長い間休止。高校がテーマだから、生徒役も入れ替わっていくが、旧キャラクターの人気が強く新キャラクターの物語がなかなか軌道に乗らない。最近では旧キャラだけの物語に再び戻りつつある。
アメリカのTV番組は、好調だとずっと長く続くが、実は最後の方のストーリーはだんだん無理が多くなり、ファンも習慣でつきあっていく感じになるのは否めない。今回、早く打ち切るのは、視聴率がずいぶんと落ちているらしいし悪くないと思う。
今シーズンが始まった時から、すでに来シーズンが最後と宣言されている。何だか卒業して1年くらいで、皆NYでしっかり生活できていて、ルーザーの代表だったレイチェルも早くも成功しちゃってて、そこが物語をウソっぽくもしている。ファンタジーも、リアリティとのバランスが崩れると、全体がフワフワしてしまうようだ。
さて、あと1年、どんなストーリーで盛り上げていくのだろうか。大人のファンとして、差別や夢をテーマに考えるひとりとして、僕は有終の美を楽しみに待とうと思う。