学生時代、というよりも、大学4年生の夏。普通ならきっと就職というのは決まっているものかもしれないのですが、まったく縁がないと思って動いてもいなかった自分が、やっと思い切って通い始めた「宣伝会議」のコピーライター養成講座。
やっぱり書くことを仕事にしたいかな、とぼんやりと思い始めて、その頃、注目を浴び始めたカタカナ職業に憧れて、どういう方法があるのかと調べたところ、そういう講座があったのです。
卒業生には有名な方々もいらしたし、講師陣もバラエティに富んでいる。結局、基本コースやその次の少人数の専門コースなど、そこに半年くらい通うことになり、たくさんの学びの機会をいただきました。
新しい体験もあり、疑似恋愛のさらに真似事みたいなこともあり、喧嘩も仲違いもあり、誤解も感動もあり……。
平凡で何もしてなかった学生時代としてしか記憶していなかったのですが、思い出すと、様々な起伏に心揺さぶられていたことに気づくものですね。
前置きが長くなりましたが(笑)、とある授業の中で、とある講師がおっしゃいました。
「次の会社に移るのは、今の場所で一番になってからだ」と。
その言葉、とても強烈で、なぜかずっと心に残ってしまいました。カタカナ職業の皆様は、多分わかると思うのですが、移動が多い業界なんですよね。異動じゃなくて、移動。
自ら決めて、自ら動く、横方向への移動です。
その講師は、最適なタイミングについて、お話されていました。
自らも横移動、というか、多分、横斜め上移動を繰り返し、動く度に給料を上げ、タイトルを上げ、より重い責任を引き受けて、成長してきた方でした。
まったくの横移動って、あんまり意味無いですものね。やっぱり動くなら、目指すべきは、「斜め上」への移動です。
そのタイミングというのは、彼が言うには、「今いる場所で学ぶだけ学んで、もう上がいなくなったら」辞め時だ、と言ったのです。
なるほど~、と思いました。
逆に言うと、単に上に上ればいいんじゃなくて、そこでは、学ぶだけ学び尽くすことが大事。そして、天井感を感じたら、思い切って出なくちゃ、それ以後の成長はないよ、ってことでもありました。
このことは、自分にとっては、ちょっと違う意味合いにも広げて解釈することができて、役に立っています。
例えば、今、ロサンゼルスにいるわけですが、一生懸命、日本やハワイで事業拡大しようとしているけれど、足元のロサンゼルスはどうなんだっけ、何もまだ始まってすらいなかったなあ。まずは今、住んでいる場所でやり尽くすことから始めないといけないのではないのか?と思うわけです。
ハワイにいる時もそうでした。まずはハワイで一番になろう。そして、他へ出ていこう。ハワイの、日本人観光客をターゲットにした市場で一番になる。それから、次の市場を考えるということ。それが正しい順番であるのは分かるのですが、同じことだけしていると、飽きるし、目移りもするし、伸びが遅いと苛立って、つい他のところに次々と目を向けてしまいました。
持てるエネルギーとリソースを集中することは、何よりも大切なのですが、実は「じっと我慢して、ひとつに集中する」ことが苦手なんですよね(反省)。
そんな自分の失敗の経験から、ライフコーチのお客様にも、ふたつの方向からお話しすることにしています。
1.まずは今いるところに目を向けて、そこで学べることは何か、挑戦できることは何か、マックスまで可能性を追求できたのか、問い正してみよう。諦める前に、絶望する前に、他に可能性を求める前に、できることはあるかもしれないよ、ということ。
2.その上で、もうここまでかな、自分がこの場所でトップクラスに成長できたかな、と思ったら、次のステージに上るために準備して、さらに難易度が高い場所へと動いていきましょう、ということ。
稲盛和夫氏の盛和塾でも学びましたが、まずは町で一番になる。そして市、県、地域、国で一番になったら、アジア、世界へと目線を大きく上げていけ、と。
まずは、町内で一番を目指す! それから次へ。灯台下暗し、という言葉もあります。できること、ちゃんとやり尽くさないのに、ふらふらと次に目移りしていちゃダメなんですね。
ちょっと行き詰まったかなあ、と思ったら、今一度、今いる場所で一番になれる方法を考えることから始めてみましょう。できることは、きっとまだまだあるに違いありません。