恐怖心を乗り越えるためのシンプルで強力な必殺技

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アメリカを代表するマーケティングや新しいリーダー像などに関する著述家のセス・ゴーディン氏が、恐怖心の克服に関して「To overcome an irrational fear…」というブログエントリを書いていました。

Irrationalというのは、理論的ではなく、そもそも恐怖を感じる必要のないことへの、という意味です。高い所を怖がったりするのは、本能の一部で、危険を察知するために必要なことなので、Rationalな恐怖に属することですね。

シンプルで身近な文章で伝えているのは、ごく簡単なことではありますが、自分もひじょうにパワフルで、これ以外にないだろう、と思っているものだったので、共有したいなと思いました。

僕は、恐怖心という感情を呼び起こす要因は、まったくやったことがないという「未知の体験への恐怖」と、過去にやってみたら失敗して恥をかいたり、傷ついたりしたから、それを繰り返したくない「痛い体験リピートの恐怖」があるのかな、と思っています。

でも、きっと多いのは、やる前に「怖い」と感じて、やらない選択をしているケースかもしれませんね。

新しい経験、新しい場所、新しい役割や責任。それらは、私たちをワクワクさせもするのですが、同時に失敗したらどうしよう、とか、人に何か好ましくないことを言われたらどうしようと、最悪のシナリオを想定して足がすくんでしまったりもします。

はじめの一歩を踏み出すことができないので、当然のことながら何もスタートせずに、元の場所で愚痴を言ったり、人を羨んだりするばかり。それでは結局、どこへも行かないわけですから、何としてでも、恐怖心は乗り越えて前に進んでいかなくてはなりません。

セス・ゴーディン氏は、その恐怖心の克服には、「小さく毎日行動して習慣にする」のが一番だと説いています。

書くのが苦手だったら、無記名のブログでもスタートして毎日、1行、2行と書いてみる。慣れるまで、平気になるまで書き続ける。話すのが苦手で怖いなら、小さい人数の前でとにかく声を出すことを心がける。そしてそれを毎日続けて習慣にする。習慣こそが、恐怖心よりもはるかにパワフルな威力を発揮するのだと彼は言います。

自分の過去の例をあげると、今から14年ほど前に、「来月から社長代行をしなさい」と突然、言われて、準備期間もないまま、見よう見まねでスタートせざるを得ないことがありました。先週までは別な人がやっていたことを、今週からは突然、自分がやらなければならなくなった、という状況です。

そしてその初日の月曜日。毎週月曜は、社員全員が集まっての朝礼みたいなものがありましたが、わずか10名ほどの社員ですから、会議スペースの(部屋ですらない)応接テーブルを囲んで打ち合わせをします。

いわゆるお誕生席みたいな場所にいつも座っていたのが社長で、しょうがなく、その日からは自分が座ったわけです。いつも見ていたのとはまったく違う風景。自分が何か言葉を発しないと朝礼も始まらないし、終わらない。

前の日から、この瞬間のことを想像しては、ドキドキと恐怖心が支配してどうしようもなくなっていたのですが、実際にやってみたら、全然うまくいかずに、今度はまたこんな気まずい瞬間を体験するなんてゴメンだよと、ますます恐怖心が募るようになってしまったのです。

ありゃりゃ…、なんてことに首を突っ込んでしまったんだろう、こんなの大の苦手なのに、と逃げ出したくなる瞬間でした。

しかし、月曜日は嫌でも巡ってきます。2週目、3週目、4週目。何度か繰り返すごとに、だんだんと要領がつかめてきます。その他にも営業会議、編集会議、ウェブの制作会議など、すべての会議を自分が仕切ることになったわけなので、誕生席に腰掛けて会議をリードする、ということが、いつしか当たり前になっていきました。

実のところ、会議にはきちんと果たすべき目的がありますから、その目的の前には、自分の恐怖心など、実にちっぽけな存在でしかなかったのです。

乗り越えるべきは、失敗への恐怖でも何でもなく、会議の目的を果たすために何ができるのかを見出して、実行していくためのスキルの習得でした。

恐怖心との取り組みにおいて、最悪の「負け」パターンは、「避ける」「やらない」ということでしょう。体験できなければ、未知の世界は未知のまま。下記のような恐怖のループにどっぷりと浸かって、一生、出ることができません。

「怖い ⇒ 避ける ⇒ やらない ⇒ 経験できない ⇒ できない ⇒ 余計怖い」

このループから早く脱したものが、勝ち。成功とは恐怖心からの脱出ゲームなのです。

そのためには、Just Do It! 「とにかくやるのみ!」

大きなことを考えると怖さで足がすくみます。高所恐怖症の人がいきなりスカイツリーのてっぺんに登れと言われても無理。まずは二階のベランダに出てみるとか、ちょっと高い木に登ってみるとか、それを毎日繰り返して、高いところからものを見ることに慣れればいい、ということです。

人前で話すことが怖い人が、いきなり300人の大観衆の前に出たら、卒倒してしまうかもしれません。だから、2名、3名、4名という人の前で話す訓練をして慣れることが大切です。

セス・ゴーディン氏のブログは、とっても短くて、コンパクトに大事なことを表現しているので、英語の勉強にも良いかもしれません。また、彼の著作に興味がある方は、最近では下が秀逸です。必読書として僕がクライアントにおすすめする本のリストに入れています。

個人力が試される時代にあって、どんなスタンスで生きればいいのかが明確に見えてきます。邦題が誤解を与えるかもしれませんが、組織論ではありません。ひとりで起業したり、独自のライフスタイルを確立したい人にこそ、役立つ一冊です。
(一部、アマゾン日本版では評価が厳しいことになっていますが、読んでいない人の監訳者へのものなので、気にせずに、アメリカ版では絶賛されていますし、成功者がこぞってオススメしています。訳も問題ありません。)