あー、面白かった。起業家・杉本宏之さんの「30歳で400億円の負債を抱えた僕が、もう一度、起業を決意した理由」。
宣伝にある「経済小説を超えた実話」っていうのは、大げさではなかったですね。そもそも経済小説って僕はまったく読まないのですが、これは事実だと分かっているし、文章も構成もとても読みやすいし、何より起こったことそのものの力がスゴイ。著者である杉本さんの魅力にもぐいぐいと引き込まれて、一気に読んでしまいました。
やることいっぱいある時に限っての現実逃避なのですが、現実の話がこれだけシビアに突きつけられると、逃避してる場合じゃないだろと、身が引き締まります。
高校を出て不動産会社に就職。一躍トップセールスになって独立した会社を5年で上場させた著者。その時、弱冠28歳。史上最年少だったそうです。そこからリーマン・ショックの影響で1年半で一気に下落。民事再生を申請、400億円の負債を抱え、個人的には離婚して、自己破産までして…。どん底の暮らしになるまでの過程が、もう壮絶で心臓痛いです。起伏の激しい人生ですね。
それがね、また負債を返済して、起業して、学んだことをきちんと実践して、自分が理想としている会社を作り上げていくんですよ。底を打つと、人はまた明るく希望を持てるんですね。そうなったことが分かって読んでいるから、救いがない状態に思える場面でも、ここからどうやって立ち直るのかなあ、とそちらに気が向いて先を読み進んでしまうのです。
かつての幹部や社員が再び集まってきて、彼を慕って、敬って、新しい事業を起こしていく。杉本さんも彼らに心からの感謝と信頼を返しながら、リスクヘッジを考えた、堅実な経営を実行する姿が、爽やかで良いのです
そこに一番感動しました。周りにいる経営者仲間にも愛されているし、人望が厚い方なんだなあというのが読み取れます。堀江さん、藤田さんら、スター起業家もたくさん出てきて、なんだかまるでTVドラマのシナリオを起こしたような感じです。
一応、社長とかやらせていただいたけど、僕はね、ダメだな、と思いました(笑)。全然、違うな、と。比較とかじゃなくて(そんなことはしようとも思わないです)、投資家はわかる。職人も従業員もわかる。でも起業家っていうのが、やっぱり分からないみたいです。
分からないから憧れるし、このドラマの凄絶さに現実の厳しさを超えた浪漫を感じる。心の芯までかきたてられました。フィクションよりも、遥かに刺激的。今、売れすぎて一時的にアマゾンでも品切れ中みたいですけど、キンドル版でぜひ。