ハワイ、ニューヨーク、日本と住んだことのある友人に、どことも違うロサンゼルスの魅力を体感してもらいたくて、あちこち連れ回しました。
魅力、というと、ちょっと違う響きかもしれません。
「異国感」や「特徴」、「不思議さ」「驚くべきところ」という言葉に近いものかな。
僕にとっても、自分が、この場所が面白いと今なぜ感じているのかを見直し、日本の方にぜひ持って返っていただきたいメッセージのようなものとして再構築する良い機会となりました。
これは、観光地めぐりとはまったく違う「気づきの旅」。
自分が、ここを案内することで伝えたいことって、何なんだっけ、というものが、今回は、感度抜群の素敵な友人が同行してくれたことで、とてもクリアになりました。
1.広さ
ロサンゼルスはとにかく広いのです。フリーウエイを使って時速120キロで走っているのに、目的地までは延々と走り続けないとたどり着かないことも多いです。それが、他の土地、別な生活圏に行くため、というのなら分かるのですが、同じ生活圏内で、それだけの移動を日常的にする、というところが違い。
普通の道路も、時速60~70キロは当たり前に出せるのですが、それでも信号につかえ、自然渋滞が発生し、ただでさえ面積の広い平屋ばかりでだだっ広いのに、とにかく移動に時間がかかります。
今回はオレンジ郡にも行きましたが、あそこはまた輪をかけて桁外れに広い(笑)。セミナー会場のカリフォルニア大学アーバイン校も、入ってから、いったい何分、車を飛ばせばいいのという位に、ハイスピードで延々と行かないと目的地に行き着かなかったりします。キャンパスかと思うと、突然、両端に未開の荒野が現れたり。迷子になったら怖いぞ~という、想像を絶する広さなのです。
もちろん、これは単なる一例。こういうのって、ちょろっと来ただけではなかなか分からないのですが、今回は友人にもたっぷり味わってもらえて良かったです。
2.豊かさ
ロサンゼルスは豊かな街です。豊かさは、延々と続いています。途中、あれっ、ここは危なそう…というエリアが点在したかと思うと、再びまた豊かなエリアになっていったりします。
豪邸って言うのも、際限がないくらいのスゴイものがあるわけですが、値段はそこまでしなくとも美しく大きな家並みが広がる豊かな街は、実にたくさん存在します。え、ここにも、あそこにも、そしてこんなに延々と、と、豊かさのレベルが、何だかまったく違うことに気づく瞬間です。
庭や舗道や中央分離帯や、あらゆるところがきれいに整備されていて、住民の目に心地よい環境が整えられている、のが、豊かなエリア。庭が荒れている家が多く見えたら、ちょっと危険信号。わかりやすいのも興味深いところです。
公共の図書館などに行っても豊かさを感じます。友人を僕の仕事場であるウエスト・ハリウッド・ライブラリにお連れしましたが、寄付もいっぱいあるとはいえ、とにかく贅沢な作り、お洒落な感覚に驚嘆していただきました。
そうしなくてもいいのに、あえて、したいからする、人々の心地よさのためにする、というところに、豊かさは現れるように思います。
3.大きさ
広さとは違う、大きさ。これは、今回は病院でも感じていただきました(笑)。
ライブラリと家を結ぶ通りには、巨大なショッピングモールもあるのですが、その大きさの倍以上はあると思われる、まるで生き物のように圧迫感のあるゴージャスな病院が建っています。上の写真がそのシーダーサイナイというLA最大の私立病院。正確に伝わる写真を探しましたが、全景を収めるのが不可能なのか、やっぱりありませんでした。この写真も、右にもう一個つながっているビルが写っていまい、3分の2状態です。
3つの巨大ビルから成り立つ、複合コンプレックス施設で、未来都市のようでもあります。こんな病院、迷子になってしまう、というか、どこに何があるの?って感じ。ビルの中の移動も、自転車使ってもたいへんそうなほど、大きいのです。
それだけの患者がいて、それだけの医者や看護士がいて、サポートする人々がいて、巨大な医療マネーがあるのでしょう。しかも、病院の周囲には、リサーチセンターとか検査病院とか薬局とかリハビリ施設とか、無数の関連施設があちらこちらに立ち並んでいて、ビバリーヒルズが、実は医療の街であることも分かります。これは、近くに住まないとなかなか見えてこないことかもしれませんね。
豪邸に住んでいる方々の中にも、医療関係の方が相当いるんだろうなあと思います。
4.開放感
ロサンゼルスには、ハワイとはまたちょっと違った開放感があふれているように感じます。
都会と海と山とがごちゃっと一箇所にある感じだし、基本、人々は車移動。気取った格好をする必要がまったくなく、本当にカジュアルです。
昼間は必ずと言っていいほど晴れていて、乾燥した気候。気候がカラッとしていると、性格もカラッとしていくものなのでしょうか(笑)。皆、他の人が何をしていようと気にしてなさそうですし、じろじろ見られて恥ずかしい思いをする、なんてこともまったくありません。
それを、人が冷たくて、他人に関心がない、と解釈するのは、早とちりかなと思います。声をかければ、皆、とてもフランクで優しく人と接することが分かります。東の方のクールな感じとは違う人との距離感があって、それは僕には何とも程よく心地良く感じます。
ハワイのように、どこへ行っても知った人に会うような小さな島も、それはそれで居心地が良くて、いつも誰かに守ってもらっているような温かい感じで過ごせたのですが、ここはここで、「何してもOK!」みたいな、あらかじめ許された感が大好きです。
ビジネスのためのリサーチも兼ねて、友人をウエストハリウッドのゲイタウンにもご案内。なんたって、横断歩道がレインボウカラーですからね(笑)、なんだってアリです。(写真上)
5.選択
高級ブティックがあるかと思えば、ここはファーストファッションの発祥の地でもあります。高級車がずらっと並んでいるところでも、プラグインやハイブリッド車が大人気で存在を主張しています。
ファーストフードやドーナツ屋なども多いけれど、ベジタリアンのためのレストランや、自然食品が手軽に、そして比較的リーズナブルに手に入ります。
人口も多いし、経済規模も大きいから、当然、多彩なビジネスが参入をし、しのぎを削ります。すべてのチェーンがあり、すべてのフランチャイズが軒を連ね、その中で、個人経営の良心的なお店がしっかりと事業を展開していたりするのも面白いところ。
どんなライフスタイルを送ろうとする人々にも、それなりにいろんな選択が与えられているのって、とても大事なことだなあと、ここへ来て実感できるようになりました。これもOK、それもOK、お望みがあるならば提供しますので、好きなようにそこから選んでください、と言っていただいている気がします。
前項でも触れた、ゲイタウンのお話なども、「選択」「ライフスタイル」というキーワードと重なることですね。生活様式を決定づける宗教についても、選択が豊富だし、人々がそれを許容し、互いにリスペクトしているのを感じます。
市場があるところに、供給がさっと用意されていく。市場原理が、とても気持ちよく、健全に働いている印象です。
6.人種
人種のるつぼ(メルティング・ポット)、と言われたのは昔のこと。今は「人種のサラダボウル」と呼ばれるようになっています。るつぼ、というのは、混ざりあって境目もなく、見分けもつかない状態になるわけですが、サラダの場合はそうではありません。
具を混ぜ合わせはするのですが、素材はそのまんまの存在を主張して、カタチを崩すことはしません。分けようと思えば、くっきりと再び分けることができます。
世界で最も多く日本人が住んでいる都市なのに、ここではアジア人の中でも超マイノリティであるという不思議感も面白いものです。国外に出ている国民が、比率としてとても少ない、ということなんですね。
ロサンゼルスは、すでに白人がマジョリティではなく、ヒスパニック(分かりやすく言うとメキシコ系)が4割を超えるようになっています。10%を占めるアジア人は、中国系、韓国系がダントツで多く、しかも増え続けています。
リトルなんとか、というエリアがたくさんあり、アルメニア、バンコック、サイゴンなど、ある国の出身者が集まって小さなビジネスコミュニティを作って存在をアピールしています。
その中でも群を抜いて多いのが、中国人であり、韓国人です。
今回、友人にもコリアタウンを見ていただいたのですが、時速50~60キロくらいで走っているにもかかわらず、ハングル文字の看板は、延々と5分も10分もなくならないのです。
「ねえ、まだ続くの?」と唖然として聞いてしまうほど、普通の感覚では信じられないくらい続きます。それは縦に一直線、だけではなく、横にも延々とつながっています。つまり「面」として驚くほど広大で、まさに「タウン」。LA郡でも最も人口密度が高いエリアだそうで、12万人が住んでいると言われています。この存在感。LAに来たら、ぜひ見て、驚いていただきたいものです。いろんな意味で、感慨深いです。
7.グローバル経済
日曜の夕方、ブランドブティックが集まるロデオドライブを車から見学しましたが、この日、目立ったのは中東からの観光客と思しき皆様です。
装束をまとった女性が男性を従え、エルメスのオレンジ色のバッグや、シャネル、カルティエなどをいくつも下げている様子があちこちに見られました。この界隈でお金を落としていくのは、中国人とアラブ系の観光客だと言われます。
中国人はとにかく名前の知れたブランドを買うが、アラブ系は気に入れば無名ブランドでも買っていくのだと、とある日系のブティックで働く友人が教えてくれたことがあります。昨年の夏の売上げは、アラブ系の皆さんのおかげで本当に凄かったのだそうです。実際にこの目で見てみて、それも納得です。
セミナーをしたアーバインの街は、教育の質の高さで知られており、中国人や韓国人がどんどん移り住んでいます。良い大学のアジア人枠は、中国からの留学生でいっぱいだったり、英語学校には韓国人のお母さんがビザを取って子連れでやってきて、実は本命は子どもを地元の小学校に通わせることだったり。
電気製品を見に行くと、そこにあるのは韓国ブランドばかり。20年前にハワイに移住してきた時と比べると隔世の感があります。
などなど、まだまだこれらは一例で、話は尽きないのですが、ロサンゼルスに来た方々には、話だけではなく、ぜひ「体感して」帰っていただきたい事ばかりです。やっぱり百聞は一見に如かず。来ないとわからないことって、いっぱいあるんですよね。それはもちろん、どこの場所でも一緒ですね。だからこの体験をしっかりと受け止めて、自分も体感の旅を心がけていこうと思います。