アメリカという国全体で、肥満が大きな問題になっていることは盛んに報道もされてきているのですが、それほど深刻に受け取られている感もなく、何かが大きく根底から動いているような変化の兆しも見られないまま、10数年が過ぎているように感じます。
オバマ政権になって、ミッシェルさんが子どもの休職改善とか、運動習慣の導入とかリーダーシップを取って見せようとしてはいるけれど、何となく冷ややかなトーンで見る空気感もあるのは気のせいでしょうか。政治がらみになると、どうしても反対政党がいるし、一致団結ムードにはなりにくくて残念ですね。
メジャーなTV局で、ふたつほど有名なダイエット番組が放送されています。NBCの「The Biggest Loser」と、ABCの「Extreme Weight Loss」。NBCの番組の方が歴史は長いのですが、シーズン通して見ないとならないのと、中で参加者たちに競われる分、ヘビーです。後者の方は一話完結、ひとりのストーリーにフォーカスしていて見やすく、大好きです。
クリス・パウエルというパーソナルトレーナーが、160キロから200キロ以上ある、一線を越えてしまった巨漢とも言える人たちを、1年かけて半分サイズにしていく模様を追ったリアリティ番組。皆、心の何処かで痩せたいと思っていて、でもひとりではできない、助けてほしい!と番組に応募してくるわけです。
採用された人たちは一様に心に問題を抱えています。
親から捨てられた。子どもが不慮の事故で死んだことで自分を責めている。負けてはならない大切なスポーツの大会で負けた。親の望むビューティコンテストで受からなかった。ゲイであることを隠して生きてきた。子供の頃に性的虐待にあった、子どもを育てられずに養子に出したことを悔やんでいる…などなど。
あることをきっかけに彼らは心の荷物に耐え切れなくなり、心に鎧を身につけるかのように、身体を大きくして防御をはっていきます。あるいは、心に空いた大きな穴を埋めるために、その穴をふさぐかのように、食べ物で満たしつつ、食欲中枢を壊していく。
番組に出てくる人たちは、たいてい、この2つのパターンです。1)鎧を身につけるか、2)穴を埋めるか。肥満とはどういうことなのかが、ものすごく単純化されて見えてきます。メタファー(比喩)のようでいて、事実、それが体重という現実の重みになって現れてくる。心の問題と身体の問題はちゃんとリンクしているんですね。
彼らが最初にやらねばならないのは、自分と向き合うこと。そして自分の中にあるダークな部分を見つめ、それがどこから来ていて、どう影響を与えているかをしっかり認知する。その上で、Let go – 手放していくプロセスを経る。ゆるし、ゆるされ、自分を受け入れ、過去を受け入れ、人を受け入れ、状況を受け入れる。自分を聞き、人を聞き、自分を敬い、人を敬い、自分をねぎらい、いたわり、愛することを初めて覚えていく。
ありのままの自分を好きになれた時、人はここまで変わるものかというほどに、生き生きとした別人になっていきます。目の輝きも、肌の艶も、声の張りも、話す速度も違う。心の目線が未来を向くと、アゴがきりっと上がり、胸も堂々と上を向く。そうすればしめたもの。あとは自走エンジンが備わって、グングンとドライブがかかり、加速度を増して減量も進んでいくのです。
クリス氏は言います。「まず心のウエイトを落とさないと、身体のウエイトは落ちない」と。
人がやむを得ず抱えてしまった肩の上の重い荷物。それをひとつひとつ、下ろしていく。あるいは心にビッシリとへばりついてしまったウエイトを、引きちぎりながら、床にたたきつけるかのようにして手放していく。責任も義務感も罪悪感も手放して「身軽」になった時、初めて「身も軽く」なっていくのですね。
一年をかけた壮大な人間の成長の物語として見ながら、毎回、一緒に涙して、深い感動を得ています。ウェブでも週遅れの番組は普通に見れると思いますので良かったらぜひ。
上記だと日本からは無理なので、日本の方はYouTubeに行くと、最新シリーズもあるようです。これとか ↓ 黄金の言葉のオンパレードで、泣きながらメモ取りまくって見ていました(笑)。