「能力を未来形でとらえる」という言葉は、稲盛和夫さんのお言葉で、京セラのフィロソフィとしても有名です。
アメリカは5月の終わりから長いバケーションシーズンに入るので、今がちょうどテレビ界のシーズンの区切り。楽しみに見ていた番組が次々にフィナーレを迎えつつあり、感動のシーンがたくさん繰り広げられています。
オーディションからスタートするスター発掘番組「アメリカン・アイドル」や、スターが社交ダンスに挑戦し競う「ダンシング・ウイズ・ザ・スター」などを見ていると、人間の可能性について、しみじみと深い感動を持って実感をしていくことができるのです。
番組のスタート時には、たいしたこともできなかったコンテスタントが、週を追うごとに能力を磨き、できなかったことが、どんどんできるようになってくる。
我々はその成長のプロセスを間近に目撃していきます。
最初に頭角を現して凄かった人が、途中それほど伸びずに落とされたり、ダメだな、こいつはと思っていた人が、グングン才覚を開花させ輝きを放っていったり。
ダメ、ダメ、ダメ、ダメ、の次に、いきなり「スゲー!」と驚愕するようなパフォーマンスが飛び出てきたりするので、簡単に早回しして飛ばし見することができません(笑)。
そんな驚きを感じたくて、リアリティ番組はやっぱりはまってしまいます。単純な私は、ここから学ぶこと、勇気づけられること、本当に多いです。
そして、稲盛さんから教えていただいた言葉を思い出すのです。
やっぱり、「能力は未来形でとらえるもの」なのだ、と。
京セラさんのウェブサイトに紹介されている「能力を未来形でとらえる」という文章を、ここに引用させていただきます。
新たな目標を立てるときは、あえて自分の能力以上のものを設定することがあります。今はとてもできそうもないと思われる高い目標を、未来のある時点で達成することを決め、その一点にターゲットを合わせて現在の自分の能力を高める方法を考えるのです。
現在の能力をもって、「できる」「できない」を言うことは、誰でもすることです。しかし、人間の能力は、未来に向けて成長し、進歩していくものです。
とてつもなく難しいことでも、自分には可能ではないだろうか、努力すればできるのではないかというように、まずは自分を信じてやってみることが大切であると、京セラは考えます。
能力を未来進行形でとらえ、高い目標を設定し、その目標へ向かって努力することによってこそ、飛躍的な成長を遂げることが出来るのです。
初めてこの言葉に出会って以来、いつも勇気づけられてきたなあと深い感謝の気持がこみ上げます。今もまさにそんな状態…。
やりたかったことに挑戦してはいるのですが、あまりにも思うようにできなくて、こりゃ自分は向いてないのかなとか、決定的に能力が足りてないなとか、「諦め」へと誘う否定語が次々に浮かんできます。
諦めちゃったら、きっと楽になるだろうなあとは思います。
しかし、1週間前に始めた時よりも、今の方がはるかに「見える」ようになっているのも気づいています。
まだまだ模索中で、もがき苦しんでいて、絶望し、焦燥し、こんなことしてないで他にいっぱいやるべきことあるじゃないかとも思いながらも、今やめたら元の木阿弥なんだと分かっています。
その位のことが分かる年数を生きてきて良かったな、と思う瞬間です。年齢をファクターとして考えない思考法が身についていて、さらに良かったです。でなければ、始めることもなかったでしょう。
前職での勉強会でも、何度かこの「能力を未来形でとらえる」を題材に幹部や社員とディスカッションしました。ライフコーチのクライアントにも、盛んにこの考え方をインストールしてきています。
やったことがないんだから、今できないのは当たり前。だけど、それで可能性にフタをしてしまっては、人の成長はありえません。人が成長しなければ、組織も成長はしていきません。
今、できると思うことだけで戦略を練るのではなく、今はノウハウも経験値もなくても、いずれは積み重ねていける、いずれはできるようになると信じて、大きな絵柄を描いていくことも大事です。
できずにもがいている間は苦しいものです。心身共に、消耗します。
だけど、これまでの人生を思い返してみれば、すべての場面でいつもそうだったではないか、と気づくはずです。少なくとも、逃げずに立ち向かってきたことに関しては、ちゃんと出来るようになってきたよねと分かるでしょう。
人間なんて誰も、最初は歩くことすらできないのです。それがいつか這い回り、立ち上がり、走るようになっていく。
一事が万事、そういうものだと信じて、最初の一番辛い瞬間を怖れずに、思い切って進んでみることなんだろうなと思います。そうすると、いつしか、違う世界が見えてくる。そしてある瞬間、「あれ、いつの間にかできてるかも」と何でもなく感じられる時が来る。
大小のチャレンジをして、それが当たり前のこととして身体に刻まれていけば、新しいことへの挑戦は楽しみ以外の何ものでもなくなるでしょう。
「まずはやってみる。」
その態度が大事なんですね。
あることで、思わず挫けそうになってしまっているので、自分を勇気づけたくて、自戒を込めて、このテーマで書いてみました(苦笑)。
マラソンだって、現実離れしていた3時間30分というタイムが、目の前までちゃんと来たじゃないか。身体で体験したことはやはり大きくて、こういう時に自分の支えになっています。