採用は慎重に時間をかけて。解雇は今すぐ

長いランニングをする時は、必ずアメリカで流行っているビジネス系のポッドキャストを聞いています。

良く聞くリーダー向けの番組で、話題になることが多いのが、人の採用や解雇の問題。その時の合言葉は、「Hire Slow, Fire Fast」(採用はゆっくり。解雇は早く)です。

うーむ。なかなかシビアな言葉ですが、経験が浅い経営者やリーダーほど、その逆をやりがちなのは実感するところ。

自分もそれでずいぶんと失敗したっけ、と思い出します。

採用を焦っては失敗する。ゆっくり時間をかけて互いを知る

そもそも人を採用する時って、人手不足で困っている時がほとんどです。

仕事量に比べて、人の数が少ないから、業務が回らなくなっている。あるいは、今までは回っていたけれど、人が辞めていくので補充しなくてはならない。

余裕を持って採用活動に当たれるなんて贅沢は、とくに中小企業ではあまりないのでしょう。

履歴書を見て、何となくこの人物は良さそうだ、と目星をつけて、面接でも好印象だったりした時、ついつい「やった~、なんて自分はラッキーなんだ!」と思って、結論に飛びついてしまうことがあります。

しかし実際、仕事をしてみると、意外に仕事ができなかったり、経験値が足りてなかったり、条件面で食い違いが出て揉めたり、おやおやということが起こったりしがちです。

あ、ちゃんとスキルチェックをしてなかった。

あ、もっとここのところをしっかり確かめておけば良かった。

あ、前の上司にきちんと仕事ぶりについて聞くのを怠った…。

気づくと、自分が採用を焦って、本来クリアすべきチェックポイントを飛ばしていたことが原因だった、なんてことが多いもの。

一度、採用した人材は、やはり責任を感じますから、何としてでも育てたいと願います。時間もたっぷりかけます。

でも、うまくいかないときは、ダメなんですね。

かけた時間もエネルギーも、無駄になってしまい、疲労困憊。

配属させた部署のスタッフからの信頼も失ってしまうこともあるし、彼らの生産性が、著しく落ちてしまう悪影響も引き起こしたりします。

だから、「採用はゆっくり」時間をかけないといけないのだと言うことです。

解雇は思い切って、きっぱり素早く

アメリカっぽい厳しい言葉かもしれませんが、採用にはもっと時間をかけるべきだが、解雇する時に迷って結論を引き伸ばしたりしても何の得にもならないと言います。

解雇をする、ということは、すでに何かが「うまくいっていない」のです。

それを放っておくことは、多方面に悪影響を及ぼす可能性があります。

自分のストレス。

部下たちのストレスや、業務の負担。

お客様への迷惑。

無駄なお金。

それに加え、スタッフやグループ全体に及ぼす、精神的な悪影響もあります。

問題の人物とのコンフリクトが長引けば、ネガティブな空気が社内に流れるだけでなく、不満を感じた、その人物が、周囲を煽動していくこともあり得る。

さらには、そういう問題の人物に毅然と対処しないことで、暗に「不公平感」を募らせたり、なんだ、そんなに一生懸命やらなくてもいいのか、とモラルの低下を招いたりもしかねません。

人事のコンサルタントも、そしてポッドキャストの番組でも、「育てようという意志を持ち、誠意を尽くし、時間とエネルギーを十分にかけるのが、まず大前提。でも、それでも問題が続くようならば警告を与え、3度目の最終通告の次は、もう即時解雇という強い措置をとること」とアドバイスしています。

アメリカは解雇が簡単、と思われていますが、訴訟になりかねない社会ではあるので、適切なステップを踏む必要があります。

僕も何度か解雇は経験しましたが、何度やっても嫌なざらつきが残るものです。好き好んで、そんなことをやる人は、どこにもいないと思います。

ただ、マッチング、というのもあります。

その社員の求めているものが会社にないのなら、ダラダラいたところで互いにとって損。ウインウインの真逆になっていくので、早めに切るのが皆のためなんですね。

かえって思い切って切ることで、その人物も次の仕事に向かっていく覚悟が生まれます。ある意味、究極の優しさであることも多いものです。

人にとって最悪なのは、「飼い殺し」みたいな状況だと思います。