2012年10月。カリフォルニアの上空に、ジャンボ機の上に搭載されたスペースシャトル「エンデバー号」が凱旋飛行を行いました。
その後、ジャンボから降ろされたエンデバーは、トヨタのトラックに牽引されて、ロサンゼルス市内をぐるりと64時間をかけて練り歩いた。それはまさに歩くスピードで、両翼がギリギリ通過できるような幅の道路を縫うようにして、LAX(ロサンゼルス空港)から最終地点、その後の展示会場となるカリフォルニア・サイエンス・センターへと運ばれました。
まさかスペースシャトルが自宅の真上を通り、肉眼で見ることができるようになるなど、NASAの周りに住んでいる人でもなければ想像すらしなかったでしょう。ましてや、意外にも横幅の広い機体を慎重に誘導しながら自宅すれすれに練り歩く様はいささか可笑しみのある光景で、見る人の顔が見事にほころんでいくのが、ドキュメンタリーフィルムに鮮明に記録されていて、センターの展示場で見ることができます。
初めて飛行機が飛ぶのを目撃した人たちのように、人々は皆、高揚していました。その興奮は、例えば「三丁目の夕日」を見て感じる郷愁を僕に連想させてくれました。夢、希望、未来。「明日はきっと良くなる。」そう信じて、どうしようもなく震える幼い心が蘇ります。
目の前にあるエンデバーは、実際には未来の象徴ではなく、御役目を終えて展示物となった過去の遺物です。しかし、それは、どこか遠い世界の話だった宇宙が一気に身近に感じられるようになる魔法の力を持っています。
こちらのニュース番組のレポートが、数日間の興奮をコンパクトに伝えてくれています。
ロサンゼルス市の真ん中にあるカリフォルニア・サイエンス・センターは、常設の展示がいくつもある人気博物館にも関わらず、もともとが入館無料。スペースシャトル「エンデバー」を見るのも無料。何という懐の深さなのでしょう。僕たちが何重にも心打たれてしまう所以です。
エンデバーの展示は、寄付金で成り立っています。そっと端っこの方に、寄付した方々のお名前が刻まれていますが、日本の会社としては、トヨタが100万ドル(1億円)~499万ドル(5億円弱)の欄に名を連ねています。その上に5億~10億円のリスト。そしてトップはもっと寄付した基金が。
アメリカが教育に多大なる投資を惜しまない社会であることを端的に示す一例ですね。