人は、どうしても自分を過小評価し、他人を過大評価する傾向があるようです。
人として謙虚であることはとても大事で、周りのすべてに感謝をし、奢らずに自分を高める努力は継続したいもの。
でも、そのことで自分を卑下することになったり、自信がない状態になったりするのは、謙虚のベクトルが間違っています。
昨日、ある方に、パートナーとの暮らしが再開してからリズムが狂っちゃって生産性が半減、なんて話をしたら、「ハジメさんでもそんなことがあるんですね。完璧な人だと思ってたから意外」なんてお返事をいただいてビックリしました。
完璧なわけ、ありませんから(笑)。
(大事なマラソン本番の日付を1週間、勘違いしていて、どんよりと深めの自己嫌悪中につき……涙。)
完璧な人なんて、きっとどこにもいませんよね。僕にしてみれば、その彼の方がしっかりしてて、勇気を持って着々と前に進んでいて、芯が強くて、憧れてしまう存在なのに、本当に不思議です。
皆、人のことは素晴らしく良く見えちゃうものなんだなあ~と、あらためて感じた次第です。
隣の芝生は青く見えるものと知る
ことわざで、「隣の芝生は青い」と言います。英語表現の「the grass is always greener on the other side (of the fence)」から来たもので、きっとこれは万国共通の人間の本質を表す真理なのではないかと思います。
正式表現ではないようですが、この英語の表現の後に続く一節が巷にあるのを見つけました。
「…, until you jump the fence and see the weeds up close.」(…フェンスを乗り越えて、雑草が生えているのを間近で見るまでは)
そう、本当にそうなのです。この一言、正式採用してほしいくらいに秀逸です。
皆、人のことを遠目で見ているから、すごいなあ、自分にはとてもとても…と思ってしまうのですが、どんな芝生にも雑草は生えるし、穴ぼこも空きます。ゴミも落ちてるでしょうし、木の葉も散っていることでしょう。
でも、そこまで近寄ってみないから、どうしても「完璧」に見えがちなんですね。
対する自分自身は、これ以上ないくらいに至近距離で見ているし、たいがい自分が一番自分に厳しい批評家だし、子どもの頃から親や先生に怒られたことが何倍にも拡大されて記憶装置に入って、繰り返し自分を責め続けているので、アラが見えすぎてしまいます。常に足りないところばかりが見えて、決して満足することがありません。
でも、その「自分」も、他人から見たら、同じように青い芝生なわけです。
だから、「人のことは気にしない」が正解なんですね。
他人は「目標」として設定するために利用する
つい他人と自分を比べてしまう悲しい人間の性も、逆の味方をすれば、上手に利用して成長のためのバネにすることが可能です。
下記のような思考回路に陥ると、ベクトルはマイナス方向に向かって、どんどん気分も落ちていきます。
- 人がすごく見える ⇒ 自分が何でもなく見える
- 人が完璧な存在に見える ⇒ 自分が欠陥ばかりに見える
- 人がたくさんの成果を上げているように見える ⇒ 自分が同じ場所に立ち止まっているように見える
これが、もっと進んで心のあり方が歪んでいくと、自己嫌悪に陥り、自信を失い、未来に向かう気力をなくしてしまいます。時にはそうなった腹いせに、きっかけを作った(と勝手に思っている)その人物を妬むようになって、攻撃性を帯びた批判をするようにもなっていく…。
自分の中では、もっともらしい理論立てがされているので、批判にも正当性がたくさんあって、どんどん鋭い牙になっていきますが、ふと覚めた目で見つめれば、事実とはかけ離れた言いがかりだったりすることも多いものです。心の目が曇ると、見える世界も歪んでしまうという例です。
正しいプラス方向のベクトルは、憧れを認め、すごいなあと尊敬し、近づけるように努力を続けること。
人は人。自分は自分。
ある人がすごいなと見えるならば、それは、その人が自分がなりたい姿に近く見える、ということでもあります。
だったら、せっかくそういう姿が現実にサンプルとしてあるのだから、それに近づけるように自分をアップグレードし続ければいい。
その人を目標として設定し、足りない部分を補う努力に集中すればいい。
その人が持つ良い習慣を真似て、さらにその人がやっていない自分なりの良い習慣と組み合わせて、掛け算で「自分らしい理想」を実現していけばいい。
同時に、できてないことではなく、できたことを数え、自分を素直にほめてあげる。その積み重ねで、頑張ってる自分が頼もしく思え、自信につながって、さらに大きな可能性を信じられるようになってきます。
隣の芝生が青く見えたら、それはきっと、もっと高いところへ行く準備ができたよと告げるサインです。
そこまで高みに登ってこれた自分を讃えて、さらに大きく育ててあげることに、心のエネルギーを集中させましょう。
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