有森裕子さんや高橋尚子さんを育てたマラソンの名監督である小出義雄さんが書いた本「30キロ過ぎで一番速く走るマラソン サブ4・サブ3を達成する練習法」を参考に、練習メニューを組んで1カ月。
やっぱりプロ が作るメニューは違いますね。驚くほどの進歩があって、自分が一番ビックリしています。
1998年の暮れに出場したホノルルマラソンから始まったマラソン生活も、すでに16年と少し。やっと3時間30分を狙えるところまで近づいてきています。今回は、何だか行けそうな予感。あとちょうど4週間。頑張って調整に励みます。
小出監督のサブ3(3時間を切ること)メニューによると、今週末と来週末は、35キロのビルドアップ走をすることになっています。本来、スロージョグでやっとこさ走れる距離だったりするわけですが、それを、後半に向けてスピードをグングンと上げていくビルドアップ走で行うところが、3時間を切ろうとする人たちの練習なんですね。自分は3時間半でいいので(いや、それが精一杯なんですけど)、35キロに限りなく近い、32キロまで走ってみました。
レースよりペースは遅いので、さすがに3時間はかかるわけで、途方に暮れそうな長い距離です。後半、やっぱりグッと辛くなってくる場面も出てきます。歩きたくなるけど、そこで言い聞かせるのが「あと1キロだけ頑張ってみよう」という言葉です。
これは何かの本で読んで感動した言葉だったのですが、残念なことに出典を忘れてしまいました。原文はマイル表記だったと思うので、アメリカの本だったのでしょうか。どこかで事故にあったか、遭難した人たちが、果てしない時間と距離を歩いて安全な場所まで逃げてきたとか、そういうお話。
よく頑張れましたねと驚愕する人たちに対して、彼らは、「あと1マイルだけ(One more mile)頑張って歩こう」と自分たちに言い聞かせて歩き続けられたのだと答えたのです。
先が長くてゴールがまったく見えない時は、どうしても気持ちから萎えてしまって、本当は体力があるのに力尽きてしまったりします。
でも、「あと1マイルだけ」と思えば、その1マイルは不思議と頑張れるものです。マラソンでも、最後の最後で猛ダッシュする人もいる位、途中がヘロヘロでも最後の力を振り絞れば、ちゃんとできたりします。それだけ人間には深い可能性があるということなんですね。
問題は、精神力。目の前のことに精一杯集中して、その先の苦労のことなんかは忘れる。そして1マイルが終わったら、また目の前にある1マイルに集中する。その繰り返しが、我々をゴールへと導いてくれるのです。
マラソンの練習も、ふと体力が尽きるのではないか、バテるのではないか、と不安がよぎって足が止まる時があります。それは、生命維持装置をコントロールする潜在意識からの信号でもありますが、ある意味、自分を騙す「トリック」にもなってしまいます。今までの自分だったらできなかったけれど、今はできるかもしれないのに、足を止めさせようとする力が働くのです。
でも、「そんなわけはない。ここまで来れたのだから、あと少し。今までちゃんとトレーニングしてきたではないか。身体に騙されるのは止めて、あと1キロ分だけ頑張って走ってみよう。」
そう思うと、再び元気が蘇って、ちゃんと走れたりするから不思議です。
ヨレヨレに疲れた時に、あと10キロもある…と思うと気が遠くなって集中力や気力が途切れてしまいます。だから、常に目の前の1キロにすべてを賭ける。「あと1キロだけ歩かず走り続けよう。そうすれば、自分を信じて頑張れる。」そしてもう1キロ、もう1キロと足を進めて、ゴールまで辿り着けば良いのです。
前にもどこかで書いた気がしますが、マラソンは、とにかく諦めずに足を前に前に進めていれば、必ずゴールできる競技なのですから。
人生もまったく同じこと。
時に、何も変化がないようでもどかしくなり、終いには自暴自棄に陥ったりすることもあるわけですが、感情的にならず、感性的にならず、淡々と目の前の「1キロ」分だけ、足を進めていく。
そういう小さな前進の積み重ねが、気づいた時には大きな飛躍として実を結んだりするのですね。