ネットフリックスがもうすぐ日本進出。テレビの常識をくつがえす存在がどこまで頑張れるか

ネットフリックス

アメリカで大人気のネットフリックスがいよいよ日本へ進出、というニュースを年末に拝見しました。

⇒ 米ネットフリックスが2015年日本上陸?幹部人事など国内で噂飛び交う

アメリカでは後発だったHULUが先に日本に進出し、TSUTAYAもディスカスなど宅配+配信サービスをスタートしたりして、日本の映画レンタル業界もドラスティックに変わっていくのかなあと楽しみに眺めていました。

そこへ、いよいよネットフリックスが登場のようです。

ネットフリックスについての詳細は、東洋経済さんの記事を参考にしてください。

⇒ ユーチューブを凌ぐ、ネットフリックスの今。様変わりした、米国人の映画鑑賞方法

僕がアメリカに来た21年前は、まだブロックバスターというTSUTAYAと同様のレンタルビデオ屋さんが大人気でした。ビデオがDVDに変わっても、しばらくは皆、疑うことなく通ったレンタルビデオの代名詞とも言える有名チェーンです。

でも、そこに「宅配サービス」という新しいレンタルの形が始まります。それは革命的事件でした。アメリカは広いし、日本のように「駅に行く」ということが習慣としてないのです。駅前は誰にとっても便利だから店が集中する、という現象がない。

車でわざわざレンタルビデオ屋さんへ返却に行くことの億劫さといったらなかったのです。つい忘れることもあるから、時に遅延料金を取られてしまう。あの料金ほど悔いが残るものってないですよね(苦笑)。

そこへアッと驚く宅配サービス。しかも素早い、安い、そして返済期限がない! 定額性で何枚でも上限なく借りられるプランは魅力でした。

その勢いが余りにも凄かったのか、ブロックバスターはやがてつぶれてしまいました。あの形勢逆転のスピードは本当に驚くほどでした。時代はこんなに簡単に変わってしまうのかと怖いくらいでした。

ところが、人気が出るごとに、だんだんと様子が変わっていきました。新作映画も、巷ではDVDが売っているのに、なかなかレンタルに回ってこなくなりました。回ってきても枚数が限られているのか、ウェイティングリストに入れられて何週間も待たされます。つまり、新作が新作である期間、全く借りられなくなってきてしまったのです。

もちろん他のDVDが先回りしてちゃんと来るのですが、観たいものを観ることができないのは不満が募ります。ストリーミングのラインナップは旧作がほとんど。映画というよりも、テレビシリーズが一度に見れることがメリットに感じるくらいで、代替にはなりません。

僕のように嫌気がさして、DVD宅配レンタルのオプションを外し、ストリーミングオンリーになっていったお客さんが増えました。急増する顧客数にインフラが追いつかなかったのか、2011年、ついにはサービスを切り離し、ストリーミングオンリーと、DVD宅配オンリーのふたつを別々に営業するようになり、現在に至ります。

一時はメンバーの解約が急増して危ぶまれましたが、サービスの再構築が功を奏したのか、また勢いを取り戻しました。オリジナルのTVシリーズを作り始めたことが要因です。

有名監督とハリウッドの有名俳優を使って、一気に13話分を公開した話題作「ハウス・オブ・カード」は、業界を含め、世間をアッと驚かせる事件でした。

今、日本でもDVDで出ていますね。

コマーシャルもない。翌週を待つこともなく一気に見られる13話のクオリティ高い大作が、月々の契約金の中から、追加料金なしで見ることができるのは魅力でした。旧作オンリーだったストリーミングサービスに、他では観れないオリジナルの「新作」が登場したのですから、画期的です。それは、いわゆる「テレビ」という旧来の概念への挑戦にも見えました。

大好評に背中を押されて、ネットフリックスはどんどん勢いに乗って新作を作り続けます。会員数も伸びていきました。

昨年の、TV界のアカデミー賞である「エミー賞」は、僕のようにエンタメ界をオタクっぽく見続けているものとしては衝撃でした。

だいぶ前から、NBC、ABC、CBS、FOXなどのネットワーク局が放送する作品群を押しのけて、ケーブル局のHBOやShowtimeが予算と時間をかけて作る良質な作品が賞を取ることが多くなっていました。

それらの局を追加契約していない人たちにはちんぷんかんぷんな状態になってきていましたが、今度はノミネート作品に、ケーブル局ですらなく、「テレビ局」だなんて誰も認知もしていないネットフリックスの作品が入ってきたのです。

ストリーミングのレンタルビデオサービス会社制作の作品がネットワークの作品と並んで評される時代が来るなんて、まさに衝撃です。ケーブル局が受賞対象になっていたのとは、次元が異なるのです。

それは、「テレビ」という概念が、根底から変わってしまった瞬間でした。

今週末に放映されるゴールデン・グローブ賞にも、ネットフリックスの作品が複数、ノミネートされています。

ストリーミングに出遅れたAmazonが、慌てて追撃するサービスを始めています。

第一作として華々しく発表した「Trnasparent」が、いきなり主演俳優と作品賞部門でノミネート。最有力候補のひとつになっています。

(注:その後、両部門で見事に受賞! 関連ニュース記事はこちら。英語です。)

ネットフリックスが良いのは、TVの作品をまとめ見できること。それからわざわざお金を出してまで見るかしら、という微妙だけれど、無料ならぜひ観たい良質なドキュメンタリーが豊富なこと。オリジナル作品が頻繁に出てくること。

さらに、iPhone、iPadなど、どのデバイスでも共通で見ることができること。スマートTVやアップルTVにも組み込まれているので、デバイスや機会の豊富さ、容易さという点では圧倒的に勝っています。

ネットフリックスが日本に進出した時に、Tsutayaみたいな旧来のレンタルサービスはどうなっていくでしょうか。日本も業界の形がどんどん変わっていくのでしょうか。

アメリカもまだまだこの辺のムーブメントは始まったばかりで、今後、どんな風に変革していくのか未知数です。「テレビ」や「映画」という概念がどんどん変わっていく入り口に今、いるのかもしれませんね。ワクワク。