仕事かけもち。移民の暮らし in ロサンゼルス

uberdriver

先日、ロサンゼルスのダウンタウンで行われるイベントがあり、UBERに乗りました。

ダウンタウンはとにかく駐車場が不足している場所で、料金も一日料金とかしかなく、しかもとても高いのです。

電車があったら15分強で行くような距離。空いていれば、車でもそのくらいで到着します。

が、週日だとその倍から3倍の時間がかかってしまう。

だったら、空いている行きはパートナーに送ってもらって、タイミングがわからない帰りは、UBERを拾えばいいやとなる。

距離がないので、UBERでも15ドルあれば、楽勝です。チップがいらないので、それきり。

さて、金曜の夕方4時近く。

アプリでリクエストして、やってきた車はホンダのシビック。

運転手さんは、ハリーと言う名前で登録しているメキシコ系男性。歳は30代半ばといったところでしょうか(完全な推測ですが)。

気さくな彼は、道中、いろいろと話しかけてきます。

日本出身だと知ると、「いいねえ、いつかは日本に行ってみたいんだよ、憧れの国なんだ」と答える彼。

実は、そういう反応、ものすごくたくさんあるんですよね。

スーパーのレジとかで話し込まれることもありますが、その時にも同じセリフが出ます。

日本は、きちんとした国で、日本人は、礼儀正しく勤勉であると広くリスペクトされていて、まだまだミステリアスな部分が多いようで、他とは違う、まだ見ぬ国へと行ってみたい気持ちが募るようです。

でも、行ってみたい、と、実際に行くぞ!という決断の間には、ずいぶんと距離がある感じ。誰の話し方を聞いていても、少し遠い憧れに聴こえます。

彼はしょっちゅうスマホで誰かと親しげなに話しています。

時に英語、時にスペイン語。

後で聞いたら、同じくUBERの運転手をしている従兄弟なのだそうです。

「これ、フルタイムの仕事なの?」

UBER「いや、まさか。月曜から木曜は、ペンキを塗っているよ。モールの駐車場のラインとかさ。きれいに引くんだぜ、フラットで真っ直ぐにね」

などと、動作つきで、小説か映画のようなセリフを語ってくれます。

UBER「金、土、日と、3日間は、UBERで稼げるだけ稼ぐんだ。今日は朝6時から走ってるんだよ。夜中の12時まで、18時間連続勤務にチャレンジさ(笑)」

なんでも、日曜が奥様の誕生日で、子ども二人と彼女を、活きたエビをその場で料理してくれることで有名なお店に連れて行って、好きなだけ食べさせてあげるんだそうです。

UBER「そのための資金を稼がなくちゃね」

「でも、そんなに働いていたら、子どもには全然会えないんじゃない?」

UBER「今はさ、Facetimeがあるからね(バックミラー越しにウインク)」

なるほど。

空いていたら20分の距離が、案の定、詰まりに詰まって、トータル45分。

彼の運転も決して効率良く、抜け目なく、という感じではなくて、気があるのかないのか、のんびりモードの運転なので、事前の見積もり通りに値段は15ドルだったのですが、時間は相当かかりました。

UBERがいくら抜いて、彼に渡すのかわからないけれど、きっと彼の手元に残るのは多くて10ドルくらいでしょうか。

18時間働いたって、200ドルにもならないだろうに。

もっと効率良い仕事はないのだろうか、と思うものの、まあ居心地良い椅子に座って、ダラダラと車を走らせて、GPSの指示に従ってA点からB点へと行くことを繰り返していればいいのだから、考えることはなくて楽は楽か。

支払いも扱わなくていいし(すべてはアプリ経由で決済されるから)、UBERを仕事にしていると言えば車もガソリンも経費で落とせて税金控除対策にもなるのかもしれないし。

時給以外のメリットもあるのかもしれないな、とは思いますが、でもまあ、もっと時間効率の良い仕事があったら、自分なら絶対に選択しない職業かもしれません。

知らず知らずに貯まる疲れは相当なものでしょう。

ロサンゼルスの渋滞は尋常ではないので、ストレスもあるだろに(彼はなさそうでしたけど…)。

UBERのドライバーには、外国系アメリカ人が多いようです。

私も、かつて乗ったのは10回未満ですが、いずれもネイティブの英語ではありませんでした。

そして誰ひとりとして、これを本業としている人はおらず、皆、空いてる時間の副業。

気軽にできる、時間と車の有効活用ですね。

これって、でも、本業の仕事がきっかり残業なしで終わるからこその副業だったりもしますよね。

日本のように長時間労働+長い通勤時間が原則だと、余る時間などない。

時間こそが、最も不足してるリソースだったりする。

今回のドライバーのヘンリー君。

ロサンゼルスには長く住んでいるそうですが、私の住むビバリーヒルズのとなり町の方向へ来るのは、初めてのことだと言っていました。

ロサンゼルスは広い。そして、場所によって、住む人々の人種とか所得とか趣味嗜好とかが、かなり違います。

分けられているわけでもないのに、自分からちゃんと皆、居心地の良いゾーンを見つけるんですよね。

大統領選挙のことなど、話題を振ってみようと思いましたが、政治と宗教の話は持ち出さないのが、アメリカでの、平穏な人間関係構築の原則。

そもそも私と一緒で、永住権だけだったら選挙権など持ってないし。

下手したらトランプ氏が追い出そうとしている犯罪歴のある不法移民かもしれないし…(苦笑)。

余計なことは聞かないのが、この街の礼儀です。

UBER「ガソリンスタンドに寄って、レッドブル(カフェイン清涼飲料水)を買って眠気覚まして、もうひと仕事だ」

私の家に到着し、そう笑って車を停めた彼に、思わずチップを5ドルほど、渡しました。

奥さんのバースデーギフトの足しにしてよ、と。

降りるとすぐに、UBERから運転手の評価を入れて、とアプリで催促が。

もちろん、★5点満点。

こうやって、生の人間との触れ合いがあるから、タクシーじゃなくて、UBERを選ぶ人が多かったりしますよね。

決して、値段だけのことじゃないのです。