先日、クライアントとの対話の中で、こんな言葉が出てきました。
とある海外のある国をターゲットにビジネスをしてはどうかという話をしている最中のこと。
価格設定の話になって、「ある程度、高額設定しないと自分が辛くなるかもしれないですね」とアドバイスしたところ、彼女の口から出たのは、この言葉でした。
「でも、日本人は金払いがいいけれど、◯◯◯◯人はお金にケチなんです」
この場面で、「やった、来た来た」と心の中でニンマリと嬉しくなってしまうのが、ライフコーチの性かもしれません。
なぜかというと、このような言葉というのは、「一般化(Generalization)」と言って、便利に使える反面、偏見や先入観を生み、人間関係を壊したり、コミュニケーションを阻害したり、自分の可能性を限定してブロックしたりすることになるのです。
「いや、私の知っている例では、日本人は決して金払いがいいとは思えないし、世界的に見て、もはや裕福な国ではなくなってますよね。例えば、こんな実例もありますが、どういう風に考えますか…?」なんていう風に、「思い込み」に対する逆の説を投げたりして、その正体をばらしていきます。
日本人って言っても、いったい何人いますか? その全員が金払いがいいですか?
中国人は爆買いするけれど、全員がお金持ちなわけではありませんよね?
確かに教育や宗教や歴史的背景によって、ある種の傾向というのは生まれることもあるでしょうが、ひとつの国の国民全員に共通する特徴など、そうそうあるものではないはずです。
グルーピングすると確かに便利なのですが、逆に大いなる限界を作ります。
コーチングの現場でよく出てくる「一般化」ワードには、こういうのがあります。
「日本だと、それって無理じゃないですか」
「子どもがいると、どうしても時間がなくてたいへんで」
「成功した人って、なんか冷たいじゃないですか」
「お金持ちって、やっぱり信用できない」
「親に言われたことには、逆らえないので」
「私って怠け者なんですよ」
「パソコンが苦手で」
「私って感覚人間なので」
「私ももう◯歳なので」
「だって、皆がそう言ってます」
「旦那は、いつも◯◯で」
専門的に分類すると、1)必要性、2)可能性、3)普遍性という、主に3タイプの一般化があるのですが、まあ、そんなことはどうでも良いです。
上記を見て、なんとなくフィーリングはつかめるでしょうか?
常に、例外はある。
だけど、その人の中では、なぜかしら「真実」として揺るぎないものになってしまっている。
そのことの発見が大事だし、それを、根っこから疑い、崩していくことも大事です。
どうして、そういう思考ができあがったのかを見つけることより、「例外を指摘してあげる」ことの方が、パターン崩しにははるかに有効です。
私は怠け者で…と、未来への計画がひとりではなかなか進まないことを自己卑下して言うクライアントさんが、でも実は朝7時に電車に乗って、1時間半かかるオフィスまで毎日通っている。
そこでは責任ある立場でチームを率いて、皆に先に帰らせるために、自分が深夜まで仕事を引き受けていたりする。
土曜は病気のお父さんを見舞いに1時間半かけて病院に行き、合間を見て語学の勉強をして、ちゃんと検定試験に受かったりもしている。
おいおい、どこが怠け者なんじゃい、とツッコミのひとつも入れたくなりますよね(笑)。
そうやって「ツッコミ」をあの手この手で入れていくことで、クライアントの限定思考パターンは、崩れていくものなのです。
でも、これを自分ひとりでやるのは困難です。
なぜなら、「そんなことを言っている」なんて、自分では気が付いていないのですから。
自分の中では、あまりにも固定化した常識であって、技術のあるプロにさんざん突っ込まれてはじめて、あれ、これって本当じゃないかも、って気がついていくのです。
今回は、「一般化」について見てみましたが、その他にも、「歪曲」「省略」というふたつの思考パターンがあります。またあらためて、お話したいと思います。
★ちなみに、この「一般化」や「歪曲」「省略」については、NLPを学ぶ中で必ず出てくるメタモデルという概念です。