通勤電車って嫌じゃないですか? という問いに、100%の人が「はい、嫌です」と答えるわけでもない、ということに気がついてきた50代半ばの春。
自分が嫌なものは、きっと皆も嫌だろう、と思うと、そういうわけじゃないですよね。
当たり前ですが、忘れがちなことです。
会社で働くことのメリットは、会社で働かなくなった瞬間から感じていました。
なんだ、この異様な孤独感は。なんだ、この面倒な作業は。なんだ、この単調さは。
誰か、俺に話しかけて、ジャマをしてくれ~。
人が生み出す莫大なエネルギーに翻弄されるのが当たり前だった時には感謝できなかったすべてが、ひとりで働くようになったら、とてもありがたく感じるのでした。
自分勝手なものです。
さて、アラフォー女性のクライアントさんで、大きな会社に務めている方がいます。
自分のところをノックしてくるくらいだから、さぞかし独立心旺盛で、起業とかしたくて、ウズウズしてるんだろう、と思いきや、そういうわけでもないんですね。
「私、会社、大好きなんです」
彼女の真実の声として聞くその言葉は、自分にとっては、ハッとするような意外性を持って響きました。
実際、彼女は、会社での働き方に何の疑問もないし、能力のすべてを発揮できる、とても恵まれた環境にいるんですよね。
通勤も嫌ではないし、仲間との仕事も苦痛じゃない。時間的な制約も、それほどには感じていない。
もちろん、待遇も悪くない。
だったら、今のまま、会社で働くのが、きっといい。
ただ、彼女の場合は、先行きの不安があります。
それは、とてもリーズナブルな不安であり、世の中の人のすべてが感じるべき不安でもあります。
今は、どんな大企業に勤めていても、その会社が未来永劫、ずっと同じ業績の良さを保てるわけではないし、同じ待遇で雇い続けられるわけでもないし、年齢を重ねた社員を、ずっと大切にしてくれるわけでもない。
今の幹部の意向とは関係のないところで、大きな力が働いて、どうしようもなく変わっていく可能性のある、限りある「安定」なわけです。
50歳になって、もし突然、解雇されたら。
部門ごとごっそりなくなって、数百人単位でリストラされることになったら。
資本が変わって、40歳以上はいらない、って希望退職募られたら…。
好きな仕事が、好きな場所で、好きな人と、できなくなったら…。
「そんな時の備えを、自分はちゃんと持っておきたいんです!」
セッションを重ねることで、私にも、彼女自身にも明確になってきたのですが、彼女の真意は、そういう深いところにありました。
なるほど。ふむふむ。
であれば、自分ブランドでキラキラ働くとか、時間と場所の自由とか、デュアルライフとか、そういうこととは全然、違う次元のライフプランを描くことが理想ですね。
ということで、彼女には、会社という社会で生き残るためのリーダーシップ論などを教えつつ、いざというときにも食べていけるだけの資産構築について学習し、ひとりで稼いでいくことは思うほど難しくないかもよということを実感してもらうための学習と行動を通じて、可能性の枠を大いに広げてもらっている最中です。
会社以外のコミュニティに属することで、まったく違う価値観にどっぷりと触れることも重要なので、場の紹介もしたりして。
でも、賢い彼女は、先回り、先回りで、ちゃんと自ら動いています。そして、動くたびに、新しい視点を得て、新しい出会いにも恵まれています。
会社という、大きなアンブレラに守られている間に、真剣に未来への準備ができれば、それは願ってもないベストプランです。
ましてや、今の仕事や、職場環境や、人間関係が、全然嫌じゃない中で、そういうことができるとしたら、そんな贅沢はありませんね。
危機感を感じてからでは、もしかしたら遅いのかもしれない。
結婚について、出産について、老後について、いろいろと考えざるを得ないアラフォー&シングル女性の現実。
彼女を通じて、一緒に考えさせてもらっています。