なぜ起業家を目指さないの? 半年ブラブラして気がついた答え

コインランドリー

会社を辞めたいと思い始めたのはいつの頃だったか。おそらくライフコーチを雇うほどに迷いが溢れ出てきた45歳の頃だったかもしれません。

それまでは、働く、イコール、会社に務めるということだったので、疑いもせずに毎日、時間通りに起きて、時間になったらオフィスに行って、日が暮れたら家に帰る毎日を繰り返していました。

社長という立場でありながら、自分には何も自由があるわけではないと決めつけていたし、社員より高い給料をいただいてはいても、利益が出ようが損しようが報酬に影響がないところは社員と一緒。べつにお金への不満でもなんでもなく、ビジネスが好調に回りだすと目的意識を失ってしまったのです。そして自分の関心があちこち他所に行ってしまって問題も起きたりしました。

そんな状態は社員も見抜きます。不満に思った幹部が辞めていき、オーナーが介入してくれて自分もフォーカスを取り戻すことができたし、社員との関係性、ということでも、見違えるように良くなったりした、なんてことがありました。

それでも「社長は向いてない」「もう社長じゃない立場で仕事がしたい」という思いは変わらず。永住権が取れて晴れて独立したものの、経営管理とウェブサイト事業をお手伝いをするために入ったと思った会社で、思いがけず副社長になり、社長になってしまいました。

いやいや、していただけるなんて、たいへん光栄なことだったのです。かつては海外メディアの社長仲間として悩みを相談しあい、成功事例を共有して切磋琢磨していたオーナーから、次を託す社長として見てもらえたなんて、そんな嬉しいことはないじゃないですか。もったいぶって返事を渋ったりしたものの、考えることもなく答えは決まっていたのでした。前の会社のオーナーさんが認めベタなところがあったので、初めて自分の価値を認めてもらえたようで素直に嬉しかったのです。

でもやってみると、おやおや?またやっちゃったよ、という感じで、フリーとして関わっていた当初の興奮とは裏腹に、会社辞めたい病が復活してしまいました。社長なのに。人の会社を預かる大事な立場なのに。精一杯、素敵な待遇で迎えて頂いているのに。オーナーにも幹部にも社員にもお客様にも、とても失礼な話です。

なので、尻切れトンボで申し訳なかったですが、潔く辞めさせていただいた次第です。

さて、12月1日に出る『ライトハウス』ロサンゼルス版の特集で、「アメリカの起業はじめてガイド」というのを担当させていただいています。起業家はハワイでもロサンゼルスでも無数に存じ上げているのですが、どうして起業にいたったのかとか、創業時の苦労は?なんて話をまじまじと聞いたことはあんまりなくて、新鮮です。

今回は主旨として、起業のすすめでもあるので、記事を書きながら、いいなあ、自分もやりたいなあ、なんて気持ちがむくむく沸き上がってきます。

あれ、なんでやらないんだっけ…?

最近、僕はどうも勘違いしていることに気付きました。

「なぜ起業しないんですか?」とあちこちで聞かれる度に、「もう会社は…」とか「社長って立場はもういいかなって思って…」とか答えていました。

しかし、実際には社長が嫌だったのではなくて、雇われ社長という名の従業員として働くことを卒業したかっただけなのだと気づきました。ひとりになって、フリーという立場で自由人になりたかったのもゼロではないけれど、職人的仕事を細々続けて生計立てようなんて思っていたわけじゃない。そんなことで満足行く自分じゃないのは、よく解ってるじゃないか。ということにも、やり始めてすぐに気付きました。

今更ですが、どうやら僕は起業家になりたいらしいです。フリーランスという立場で半年ほど働いたことで、それがくっきり明確になりました。会社に行くのも別にイヤじゃない。でも毎日は行きたくない(笑)。9時~5時で行きたくはない。もっと言えば、別に会社をやりたいわけでもない。「商売」がしたい。ド素人だけど、レストランとかショップとか、コインランドリーとか(笑)。何でもいいのですが、好きなこと、情熱を傾けられることで、ビジネスオーナーという立場になりたいのでした。

なぜコインランドリーが出てきたのかというと、コインランドリーは、なぜ、どこへ行っても同じようなマシンで同じようなオペレーションなのだろう、と不思議に思うからです。近所にある「The Washing Machine」という、日本語で言えば「洗濯機」という名前のコインランドリーにたまたま毛布を洗うために訪れて、自分ならここをこうして、ああして、そしてあれやこれやするんだけどなあ…と妄想がどんどん膨らんで楽しくなりました。

未来の企業秘密だから詳細は言えないけど(笑)、ビバリーヒルズのすぐ側にあるのだから、もっと地域の特性があってもいいと思うし、実際、駐車場にはレクサスやBMW、ベンツやアウディがずらっと並んでいたりするわけだし、創意工夫次第でアップセルなんていくらでもできそうです。敷地内にあるのは、多分、彼らが入りたいと思わないリカーショップ系のグロッセリーストア(個人経営の酒屋兼コンビニのような店)だけ。

中に椅子も置いてくれないし、どうやって待ったら良いのでしょう。駐車場の台数も限られています。車の中でスマホを見ながらフェイスブックしたりしている人がいるかと思えば、洗濯機の横に立ってボーッとしている人もいます。この時間を有効に使うために喜んでお金を使わせるものがあってもいいじゃないですか。僕は、洗濯機に入れたら近所のホールフーズで買い物して帰ってきて、乾燥機に入れたらトレーダージョーズに行って再び買い物して帰ってきて、時間をつぶしています。買い物がない時は、車の中でポッドキャストを聞いて、お勉強しています。時間がもったいないから。

気がつけば、アメリカにはビジネスの売り物件が溢れかえっています。それ、ひとつ買って事業を始めてみようかな。500万円くらいからありますしね。

何はともあれ、資金が必要ですね。多少の貯えはあるにしろ、全部、使っちゃうのも不安だから、まずは資金稼ぎのための起業をするとしよう。そろそろ始動。ジャンプスタートするために、それこそ貯えの一部を投資していけば早いかな。

半年強、ブラブラしたおかげで、本来やりたいことがやっと見えてきました。20代の子がやりたいことが見つからないとか贅沢なことを言っていますが、50歳過ぎたって一緒です。動いて動いて、考えて考えて、やっと何か兆しみたいなものが見えてくるだけです。

…あ、万年36歳なんだった。