ライフコーチのセッションが何回か進んだ時、必ずクライアントに「プロフィール」または「職務経歴書」を書いていただくようにしています。
はじめの内は、まだまだ自分自身を知らな過ぎるので、やってきたことを羅列するだけになってしまいがち。自分とは何者で、どこへ向かおうとしていて、だから、どう「魅せるべきか」という戦略に結びつくようなものにはなりません。
セッションがある程度、進んできて、自分掘り起こしが十分にできてから課題を出す意味は、そこにあります。掘り起こしてきて、いっぱい出てきた自分に関するキーワードを、人にわかりやすくするために「編集」していく過程とも言えるでしょう。
人生の転機に、経歴書やプロフィールは必ず必要
今、ライフコーチを受けて、自分をアップグレードさせちゃおう、と考えている人たちは、ほとんど例外なく人生の転機に遭遇しています。
あるいは、自分からその転機を生み出そうと、変化の手前にいる人。
例えば、転職。
例えば、起業。
例えば、移住。
社長として働いた14年間は、人事部長の役割も常に兼ねていたので、実に膨大な数の履歴書を見てきました。
海外のスモールビジネスなど、一度の募集で20~30人の応募がくれば良い方なのですが、それでも年に3−4度は人材募集をかけてきましたし、派遣会社からの斡旋やインターン候補なども含めて累計すると、キャリアを通じて、軽く1000枚以上の履歴書、職務経歴書を見てきたことになるようです。
自分がどんな履歴書にパッと惹かれ、どんな履歴書だと残念に思っていたのかの判断基準も、論理立てて部下に説明できるようにもなりました。
「必ず面接にたどり着くための履歴書+職務経歴書の書き方」については、また別途ブログにまとめることにして、今回は、なぜライフコーチのセッション過程で、プロフィールや職務経歴書を書いてもらうかの理由を3つほどまとめてみました。
仕事への応募という実質的な意味合いもありますが、それよりもセラピー的な要素が強いかもしれません。
え、経歴書を書くことがセラピー…?と疑問に思うかもしれませんが、以下の説明を聞いていただくと、なんとなく見えてくるのではないでしょうか。
1.自分の価値を的確に知る
日本の履歴書と、アメリカのレジメとは、根本的に異なる部分があります。
それは、そもそもの「経歴」というものの考え方の違いから来るもののようにも思います。
日本では、会社に入っても配属がどんどん変わるし、その会社の中で、会社に都合の良いスペシャリストになれば良い時代が長かったので、経歴書と言っても、その会社で、どの部署に配属され、肩書きは何で、どんな部門を任されていたか、ということだけをさらっと書き連ねれば良いようです。
一方、アメリカでは、「あなたは何のスペシャリストですか?」ということがダイレクトに問われるので、会社名や部署名はどうでも良かったりします。
あなたがどういう立場で、どんな責任ある仕事をこなし、どのような成果を上げてきたのか。それを数字入りで、バンバン畳みかけていく必要があるのです。
控えめで謙虚な日本人のままでは、とても面接にこぎつけるための経歴書にはなりません。そもそも、自分自身が、自分がやってきたことを知らなすぎる傾向があります。
会社、という狭い世界の中ではなく、「世の中全般において、自分がやってきたことにはどんな価値があるのか」を正確に捉えられているかどうかです。
英語の勉強をしている時に、英語で自己紹介がまともにできない人が多いのですが、それは、英語の問題じゃなくて、日本語でもきちんとしたことがないからです。仕事を説明するのに、会社と部署名と肩書きを言ってしまう。
それではコミュニケーションではないし、自分の価値の主張にはなっていません。
あなたが過ごしてきた過去が、あなたにどのような貴重な体験をさせてくれて、どんな立派な価値をもたらしてくれたのかを知るアクティビティでもあります。
過去に感謝し、過去の上司や環境に感謝し、今の自分に感謝し、素直に受け入れることができるようにもなります。
人のことがやたらとすごく見えてしまいがちな自信のない人も、このアクティビティから自分を見直すことができるようになります。これまでの頑張ってきたこと自分を知り、成果を言葉に変えてみることで、深い自信がみなぎってきたりもするものです。
2.経費ではなくて投資対象になるために貢献度を売る
会社の財務書類上、人件費は「経費」のひとつのカテゴリとして括られています。
社員は労働を提供し、その見返りとして報酬をもらう。
会社側から見れば、労働を買って、対価として経費を支払っているわけですが、実は人材にも「規定以上のお金は払いたくない人」と「来てくれるなら、多少の柔軟性を持たせて、できるだけ競争力のある待遇で雇いたい人」とに分かれるものです。
前者は明らかに「コスト」感覚での採用となりますが、後者は「投資」感覚での採用です。
経費ならば安い方がいいに決まっていますが、投資であるならば、見返りの大きさに応じて、多少の出費はしても構わないと考えるものです。
投資対象として考えてもらうには、「利益に貢献できる」ことをアピールする必要があります。売上アップやコストダウンなど、様々な形で会社のボトムライン(収益)に直接、貢献してきた実績を書くのです。
あるいは、グループをまとめるリーダーとなり、人に教え、人を導き、成果を上げるチーム作りをしてきた実績なども投資の対象です。
創意工夫力や人望など、幹部候補として、他の候補者にはない可能性を持っていることなども、事例から浮き彫りにしていく技術が必要です。
と言うと、とても難しいことに見えるかもしれませんし、実際「そんな実績ないし」と落ち込んでしまうかもしれませんが、そうではないのです。
誰しも、会社でクビにならず務めてこられたということは、ちゃんとした仕事をしてきているはずなのです。その会社が継続して利益を生み続けていられたのならば、あなたの仕事も、必ずそこに貢献をしているでしょう。
あなたが自分の生きてきた人生を冷静に分析して、価値ある存在であることを自らが認め、それを的確に表現していくことさえできれば、あなたはきっと「投資」に値する人材だと認めてもらうことが可能です。
そのためには、未来につながる「表現力」が大事です。
ライフコーチのセッションでは、そこを徹底的に教示して、表現の改良に努めていただいています。1番で書いたことを、さらに強化して、自分が驚くくらいの立派な経歴書を作り上げていきます。
一緒に仕上げていった経歴書を見直すと、自分が認識してきた自分とは、まったく違う人物像が浮かび上がるかもしれません。それによってセルフイメージはどんどんアップし、より大きなチャレンジへと自分を向かわせる原動力にもなっていきます。
3.効果的に魅せるセルフ・ブランディング
以前にセルフ・マーケティングについてブログ記事を書きましたが、1で自分の過去の価値を見直し、2で自分の未来に確固たる自信をみなぎらせることができたならば、最後に、それをどこに向けて、どう売っていくかというマーケティングに進みます。
自分を「商品」として客観的に見て、市場に対してアピールしていく段階です。
過去に経験してきたことは、「点(ドット)」。
日々のタスクや出来事という「点」は、あちこちに点在していて脈絡がなかったりするものなのですが、振り返ってみて、ひとつのテーマから見直してみると、実はスーッと一本の線でつながれていったりするものです。
まさにスティーブ・ジョブスがスピーチで話して有名になったことですね。
ここでは、目的に合わせて、余分な情報を思い切って削ぎ落とし、シャープな「ストーリー」を創りあげることに専念します。
プロフィールはもちろんのこと、経歴書であっても、ひとつの人物像が明確に浮かんでくることが重要です。
とある部署の教育担当マネージャーの職に応募する時に、レストランでバイトした話をそのまま書いても仕方ありません。
そこでもし新人の教育担当にでもなったのだとしたら、そこを強調して書くのです。
人に教えたこと。
人に伝えるために資料を作ったこと。
過去の記憶を総動員して、「教育」というテーマに沿うものだけをピックアップして、ひとつの人物像を創り上げる。
私、という存在がクリアに見えてきて、自分軸ができあがります。
それは、「これから、こんな人物として自分は生きていくんだ」という覚悟の表明にもなっていくことでしょう。
まとめ
というように、経歴書やプロフィールを書いてみることには、重大な意味が隠されています。
自分に向きあい、自分を認め、自信を高め、覚悟を決める。
今、別に転機に直面していない方も、ブログなどをやっている場合であれば、プロフィールを充実させていくことで同様の効果を得られると思います。
嘘はいけませんが、「どう自分を表現するか」ということは、あまりにも深い意味があるので、軽視せずに徹底的にこだわってみるとよいでしょう。という自分も、そろそろプロフィールをアップグレードしていく時期かな、と考えています。