アメリカでだいぶ前に放送された、あるコメディの中のシーン。冴えない人生を送ってきた30代半ばの冴えない男が、嘆いています。
「今の俺の人生は、今まで俺が積み重ねてきた『選択』の結果だ。すべての決断は間違いで、すべての結果は、自分の望むものと正反対のもの。今の自分は、なりたい自分とは程遠いよ」
皆でたむろしていたコーヒーショップで、常連客である彼のメニューを覚えているウエイトレスが、「いつものね」と伝票に書こうとすると、彼はふと、思いつくのです。
「ちょっと待ってくれ、いつもの選択がこの自分を作ったのなら、俺は今この瞬間から、正反対の選択を始めるぞ!」
まったく違うメニューをオーダーした彼を、カウンターに座る美女がジーっと見つめているのを友人が指摘します。
いつもなら、そこで何も行動を起こさない自信のない彼ですが、この時は勇気を奮って違う選択をしました。つかつかとカウンターに歩いていって、美女に尋ねます。
「今、なぜこちらを見ていたんです?」
すると、彼女は優しく答えます。「私とまったく同じメニューの組み合わせを頼んだものだから、つい…」
そこで彼は自己紹介をします。気取ることなく、隠すことなく、「無職、親と同居中、僕はジョージです。」とズバリそのまんま。
彼女は、動じることなく、ますます笑みを大きくして「こんにちは、私はビクトリアよ。よろしく」と返します。
思わず「違う選択をすることの効果」を感じて、ニタ~と笑う彼。
この冒頭のシーンは、YouTubeに上がっていました。日本でもWowowで放送されていたことがあるので、ご存知の方もいらっしゃるかもしれません。邦題は「となりのサインフェルド」。このエピソードのタイトルは「The Opposite」。真逆の選択をするということです。
その後も様々な「違う選択」「正反対な決断」を貫き通して、最後には、彼はかねてからの夢だったプロ野球チームのマネージャー採用の面接の場にたどり着きます。
そこでオーナーに対しても、気に入られようとはせず、遠慮無く現状のマネージメント批判を繰り返したところ、イエスマンが大嫌いなオーナーは、「すぐに彼を採用しろ!」と部下に命じるのです。
真逆の選択を積み重ねた結果、ついには憧れの仕事をゲットしてしまいます。
あくまでもコメディの中のストーリーではありますが、このお話は、僕の中でずいぶんと鮮明に記憶に残るものとなりました。
僕らは好むと好まざるとに関わらず、毎日、たくさんの選択を繰り返しています。買い物でも、レストランでも、家の中での時間の使い方でも、無数のオプションがある中で、「これ」とひとつに絞る決断を繰り返しています。
今の僕らの生活は、それらの選択、決断の結果であることは間違いありません。僕らの中には、すでに決断のもとになる思考パターンができあがっいて、その「枠を出る」ことをしなくなっています。
その思考パターンを変えない限り、明日からの人生も、昨日までの人生と何も変わることなく、とっくにわかりきった未来へとベルトコンベアの上に乗って流れていくような人生になってしまいます。
人生の流れを変えたい。結果を変えたい。今までとは違う場所へ行きたいと思ったら、まずは「選択」を変えることです。
選択というと大げさに聞こえるかもしれませんが、実はひとつひとつは、とても小さなものです。
1日の時間の使い方も選択のひとつ。
朝、起きて何をやるか、すでにくっきりとパターン化されているかもしれませんが、それをまず崩してみてはいかがでしょう。
同じテレビを見てばかりいないで、違う番組を選択してみたり、同じスーパーで同じものばかり買っていないで、違う場所で違う商品を買うとか、今まで値段で決めていたブランドの選択を、別な選択肢のもとに試してみるとか。
そういう「小さな選択」を意識して変えてみることからスタートすると、ハードルはとても低くなります。
仕事の会議で、いつもだったらこんな場面で質問したり話したりしないけれども、今日は思い切って話してみよう、手を上げて発言してみようと「決める」。
誰も引き受け手のいない仕事があって上司が困っているようだったら、自ら立候補してみようと「決める」。
帰りに乗る電車の車両を変えてみる。
まっすぐ帰らないで、行ったことのない街を30分くらいブラブラしてみる。
いつもなら着ない色の服をあえて選んでみる。自分から知らない人にも挨拶をしてみる…等など…。
そんな小さな変化を体験するだけで、自分の決断次第で、いかようにも違う人生ストーリーを作っていけることに気づくでしょう。
でも、やろうとすると、心の中の何かがブレーキをかけようとします。
それを意識すること。
たかが一本、違う電車に乗るだけのことで、ものすごく「居心地悪い」。
人間の本能、習性とは、そういうものなのだと感じて、それが時には、いかに「無意味」な防御本能であるかを悟ること。
それが、「選択」を意識することのスタートとなります。
なんか毎日、退屈だなあ、マンネリだなあと思ったら、「選択を変えること」「判断の基準を変えること」を思い出してみてください。
そして、いつもならNoと答えることに、Yesと言ってみましょう。
あるいは、Yesと言ってしまうことにも、Noと言ってみましょう。
それこそが人生を意識的に生きることであり、主体的に生きるということ。人生を自分でコントロールするための第一歩です。